第3章 お風呂掃除【黒子 テツヤ】
腰の手つきが厭らしい。
パシッと手を叩いたけど、黒子は懲りずに触り続ける。
「・・・名前、早く呼んでください」
「うっ・・・わ、分かったから・・・手、退けて」
「嫌です」
な・・・ん、だと・・・。
ニヤリとその目が細まっている。
意外とやり手だな・・・この人。
「・・・・・・・・・・・・・・・ツヤ・・・」
「すみません、聞こえませんでした」
「!!? ~っ・・・・・・・・・テツ・・・ヤ!!」
最後の方叫んじゃったけど、無事に言えた。
な、何だこれ・・・意外と心拍数上がる・・・。
バクバク鳴る心臓を必死で堪えながら、体が離れるのを願った。
こんなの、黒子にまで聞こえそうだから・・・。
「・・・・・・? ど、どしたの、黒・・・テツヤ」
そっと目を開けると、私の肩に頭を預けた黒子が微動だにせずにいた。
死んだ訳のはずがない。
「・・・・・・すみません」
「?」
「──結構、我慢の限界です」
「? ──ぅわっ」
抱きかかえられて、そのままベッドにイン。
年頃はもう過ぎた年だから、これから何が起こるのかくらい想像はついてる。
「いやちょ、待って! 落ち着いて黒──」
「テツヤです。ほら、言って」
「っ・・・テツヤ。はい! 言ったから! そこ退けて!」
「退くわけないじゃないですか」
「!?」
グッと距離が縮まる。
お互いの吐息さえ分かる距離は、正直心臓に悪い。
もう目を会わせることすら出来なかった。
うっ・・・何しろって言うんだ・・・。
言っとくけど、もう私は心臓的にもう無理だから。
キュン死して終わるから!
「───ユキミ」
「!!!」
ぐわっと。
心臓が掴まれたような気がした。
「・・・限界なんですってば」
もう今夜は、キュン死亡フラグが立ってしまったかもしれない。
「テツヤ、髪乾かしてあげるよ」
「お願いします」
「・・・・・・・・・何やってんの」
「え?」
「なんで髪乾かすのに押し倒してんのよ」
「・・・・・・テヘ」
「テヘで済むかドアホォ!!」
【END】