第3章 お風呂掃除【黒子 テツヤ】

「私･･･黒子を嫌がってるわけじゃなくて･･･ただ」

言葉がつっかえる。

いつもなら達者な口も、肝心な時に動かないんじゃ役立たずだ。

「ただ･･･す、素直に･･･なれなくて･･･」

･･･う･･････わぁ･･･。

熱い顔熱い。ダメ、ここで取り乱したらいつもと同じになってしまう。

「･･･嫌じゃない。結構･･･くっつくの好きだし」

あああなんかツンデレみたいな発言じゃん！

違うの、ツンデレなんかじゃないの！ 分かって黒子！

「･･････分かってますよ」

「へっ?」

「･･･僕も、ユキミさんを抱き締めるの好きです。･･･素直じゃない時だってありますよ」

「･･･そんなはずない! いつも黒子ばっかり、余裕、あるみたいで･･･」

あぁ、言ってるだけで涙出てきた。

「僕だってかなり･･･抱き締めるとき勇気要りますよ」

気のせいか分からないけど、抱き締める力が強くなったように思えた。


「･･･好きなら、当然じゃないですか?」


──

「･･･っ･･･」

うわぁ･･･涙止まんない。

それを知ってか知らずか、

顎に手を添えられた。

ゆっくり振り向かせられて、今日初めてのキスをする。

こんなお風呂場でやるような事じゃないけど･･･。

今は、どうでもいいや。


「っん･･････っ!?」

いきなり口を抉じ開けられて、舌が捩じ込まれる。

バシバシと腕を叩くけど、微動だにしなかった。

「んっ･･･ふっ･･･」

く、苦し･･･息が･･･!!

逃げようとしても逃がしてくれない。

頭が真っ白になってきた。

「･･･っん･･･っ!! はぁ･･･はっ･･･ちょ、」

「･･･こっち向いてください」

次は腰に手が回って、重なるだけの接吻が続く。

バードキス? って言うんだっけ?

かなりあれって胸にズキュンと来ますよね。

「･･･ん、待っ･･･んっ･･･黒、」

「っ･･･なんですか」

珍しく黒子の瞳が苛っと歪んだ。

「･･･名前･･･呼び捨てにして欲し、っ!!」

「･･･そんなことですか」

「なっ･･･んむっ」

人が喋ってる最中だってのに、この男は･･･!

「･･･ユキミさんの方こそ、下の名前で呼んでくださいよ」

「！」

目の前の藍色の目が寂しそうに細まった。

こ、これが等価交換･･･ってやつ?