第3章 お風呂掃除【黒子 テツヤ】
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「・・・さん・・・・・・ユキミさん・・・」
・・・ん~・・・遠くから黒子の声が・・・
「起き・・・く・・・い・・・」
・・・やっぱり黒子の声は安心するなぁ。
いつも影みたいな黒子だったけど、
私にとっては日だまりみたいな存在だった。
一緒に居ると暖かいし、眠くなってくる。
「・・・く・・・ろこ・・・」
次、目を覚ました時は、素直な自分になれてるといいな───
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「───ユキミ」
「!!」
カッと目が見開く。
突然クリアになった視界は目に毒だ。
「・・・? 今呼び捨てした・・・?」
「してません」
気のせいか・・・? 呼び捨てで呼ばれた気がしたんだけど・・・。
「あ、お風呂上がったのね! じゃあちょっと掃除してくる」
「? はい」
潔癖症ではないけど、昔からのしきたり的なもので、お風呂後に一度湯船を洗うという習慣があった。
未だにこの行為の意味は分かってないけど、まぁ、もう体に染みついてしまっている。
シャワーで温水を出しながら、ふと思う。
「・・・そういやなんで・・・さん付けなんだろう・・・?」
黒子の性格は分かってるつもりだ。
高校の頃だってさん付けだったし、律儀なのは分かってる。
・・・・・・彼女のこと、さん付けするか?
いや、別に不満じゃないけどさ。
変な壁があるように・・・思えなくもない。
「・・・呼び捨てで・・・良かったんだけどな・・・」
こんなこと、言わないけど。
黒子を困らせるだけだから。
「・・・よし、洗お」
「ユキミさん」
「うおっ!?」
・・・く、黒子・・・。
「ど、どうしたの? あ、ドライヤーならそこに──」
・・・え。
「──ちょ! 黒子サン!?」
ふんわりと抱き締められた。
体重が加算されて、慌てて湯船の縁に手をつく。
「あ、危な、」
「すみません」
「謝るなら・・・いや謝んなくてもいいけど・・・は、離して・・・?」
「すみません。──離したくないです」
「──」
黒子・・・。
あんなに大人びていた人が小さな子供のように思えてきて、手を重ねた。
「・・・ごめんね、黒子」
「?」
心臓が告白された時よりバックバック言ってるけど、言わなきゃ。