第3章 お風呂掃除【黒子 テツヤ】
「・・・何してるんですか」
「情けなくて・・・つい・・・・・・
・・・!! じゃなくて! 今のは忘れて!」
あぁ、もう。空回りばっか。
黒子が大人に見えて焦ってしまう。
あの頃から変われてないのは私だけなのかな・・・
──
「───!!?」
「・・・変わらないですね。安心しました」
「えっ」
黒子の体温を背中から感じる。
後ろから抱き締められて、髪の匂いを嗅がれている。・・・嗅がれている!?
「ちょ、やめて! いま汗臭いから!」
「そんなことないです。大丈夫です」
「私がダメです!」
小一時間ほど前から掃除して汗だくだくなのに!!
さすがに今は離れてほしい!!
「ちょっと・・・離して・・・っ」
お腹に回されている腕をベシベシ叩いて解こうと・・・って何だこの馬鹿力。
「・・・嫌ですか」
「っ!! ・・・っっ!!?」
ギュゥゥゥゥンと。
心臓鷲掴みされた。
嫌じゃない、むしろくっつきたいよ!
でも・・・
「今は・・・ほんとに・・・えー・・・後で!」
自分でも何言ってるか分かんない。
~~~っ!!!
ぐう~~・・・ッ!!
「──後で! めいいっぱい抱きつくから!! お風呂入らせて!!!」
「!」
い・・・・・・・・・言ったぞ。
胸が痛い・・・イタタタタ・・・。
力が弱くなったのを良いことにそこから脱出。
後ろを振り向くこともせず、脱衣所に滑り込んだ。
・・・うぐぅ・・・・・・何だあの破壊力。
こんなんで一日ずっと一緒ッ!?
・・・心臓が・・・もたない・・・。
───────---
結局、お風呂中ずっと悶々として湯船から上がった。
リビングに着けば、テレビを真顔で見つめる黒子。
「黒子・・・入って、おいで?」
「はい」
真顔は崩さず義務的に発せられたような返事。
別の痛みが心臓を麻痺させる。
・・・やっぱり、傷つけたかな。
後悔先に立たず、なのに。
後の祭りってこういう事か。
ほわほわと香るのは新しく買ったシャンプー。
今日の日のためにストックしておいたのだ。
だけど・・・
黒子を傷つけたと言うのに、なんでこんなにはっちゃけてるの。
こんなの、意味ない。
黒子と一緒に楽しめないなら、それはもう意味がなくなっちゃうんだよ。
ごめん・・・黒子。