第2章 明日またね。 【宮地 清志】
ブロック塀に顔を打ち付けたまま、話していく。
まともに顔を見れる話じゃないから。
「・・・私が頼れるように見えたのも、大丈夫そうに見えたのも・・・先輩達が・・・居たからで・・・」
───本当は、何も出来ない出来損ない。
「先輩達の前ではカッコつけたくて・・・一生懸命になってて・・・・・・だから・・・」
───だから、私は無能なままなんだ。
カッコつけるだけじゃ、何も学べないのに。
何も装備することすら出来ないのに。
・・・バカな女だ。
「・・・・・・別に、いいんじゃねぇの? それで」
───
「・・・え」
「そんなの、女より男の方があるあるだろ。別にダサいとも思わねぇし」
「・・・でも」
「一生懸命になれたのは糧に出来るだろ? 自分で気付けてんだから、これからも頑張れるよ」
そう言って。
先輩はまた、頭を撫でてくれた。
「・・・いつでも愚痴きいてやっから」
・・・うん。
やっぱり、好きだ。
「・・・あーもー、そういうのがダメなんですよ」
「なっ、」
「厳しくしてるようで甘やかしてるんですよ! 先輩は!」
そんな優しさに、漬け込まれちゃうよ。
漬け込んじゃうよ、私。
「・・・・・・先輩が居て良かった」
好きになれてよかった。
「・・・・・・あーあー、そういうのがダメなんだよ」
「!?」
「・・・無防備なんだよ、バカ」
「!?」
「漬け込まれるぞ」
「・・・先輩もね」
「俺はわきまえてるからな」
「どうだか」
「・・・生意気だぞ」
「ふふ・・・・・・宮地さんの前ではね」
悪戯めいた口調で、わざとあしらってみる。
こんな風に言い合えるのが、嬉しい。
先輩にとっては、ただの生意気な後輩かもしれないけど。
「はーっ、寒いですねー・・・───!!?」
・・・え!?
バッと後ろを振り向く。
真っ赤になった先輩の頬は、真っ白な雪に映えていた。
「・・・なっ・・・なぁ・・・!?」
「・・・何も言うなよ。・・・言うなよ!」
「っ・・・」
耳まで真っ赤。
うわぁ・・・移る。
───初めて異性から貰ったキスが・・・頭とは。
だけど、それが宮地さんからだって気付いただけで
全身の血液が沸騰するかと思った。