第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
どんなことを話したか使用人らにさぐりを入れたら、案の定美月に関する事だけじゃなく、北条家の資産状況や経営状態に関することもリサーチしていったようだ。ま、あくまで使用人らが持ってる程度の情報だが。
それにこちらは天下の北条家。ハッキリ言って調べられて困るようなことは何一つない。長女美月の結婚にしたって、あくまで現状よりさらに会社の発展が見込めるからであって、危機を脱するためでは毛頭ない。
ただ
今回調査されてもし引っかかる何かがあるとするならば
それは
“長年美月に仕えている歳の近い異性の専属執事の存在”
…かな、って。
ま、俺が逆の立場だったら、間違いなくそこは要注意項目に入れるよ。調査目的なら見過ごせないのは当然…
あ、もちろん私も協力しましたよ。結婚後必要と思われる情報はすでにあちらに渡してある。趣味嗜好から行動パターンまですべて、それはそれは丁寧にこと細かく…。いわば“北条美月のトリセツ”。
14年間専属執事として務めてきたこの俺が提供したデータで足りないはずはないのだが…それで満足しないのが“ベテランの優秀な使用人”。
美月に関することは、おそらく重箱の隅を爪楊枝でひっかくくらい丁寧に拾っていったのだろう。ま、私の提供したトリセツの裏づけも兼ねていたのかもしれないが?