第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
「…皮肉なもんだな」
すべてを払拭するために
過去のしがらみをリセットするために頂いた休暇
なのに
こうして日本を離れても、いまだ俺の中はたったひとりに埋め尽くされている。
これ以上ないほど鮮明なすべての記憶と
焦がれて止まない
あなたへの
想いで
息が、詰まる…。
「…松本のこと、とやかく言えねぇな…」
あいつのように相手に熱をあげられるだけならまだしも、今回のケースは火遊びなんて可愛いもんじゃない。
むしろ俺の方が
そう
あの時だって
八年前
それは美月お嬢様が記念すべき二十歳の誕生日を迎えられた、翌日のことだった。
例の
衝撃的なお願いをされたのは。