第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
それでも
少しでも長く、それを糧にしていたかった。
あなたと
終わりが近づく中で過ごす日々において
私が
私であるために。
『翔…好きよ…。あなたが好き…』
『う…ぁ…っ』
『翔…っ!あ…あぁ…っ』
『っ…お嬢、様…っ』
ご主人様の部屋の、その神聖なベッドの上で
最大のタブーを犯す。
恐怖はなかった。
後悔もない。
ただ
残ったものがデカ過ぎて
正直、処理しきれないでいる。
昨夜
あなたに包まれた感覚が
その声が
その眼差しが
無理矢理歩かないと二度と動けなくなりそうなほどに、俺をそこへとどめようとする。
時とともに薄れていくであろう、そのすべての記憶が
俺の意思と反して
いずれ失われてしまうことだけが
今は