第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
昨夜
そのお心を確かに頂いた。口先だけだとも、冗談だとも思ってはいない。それにこたえる術が私にはなかったから抱いた…というわけではないのだが。決して!
せめて
望んでいただけるなら、私でお返しできることであれば、と
そういう気持ちも多少はあった。
…自分の邪心はさておき。
執事たるもの、私欲で行動するなんて最もあってはならないこと。よって私のなす事はすべてお嬢様のためのもの。それ以外のナニモノでもない。
だが
私欲が主人の望みと一致した場合は?
通常ならば、お互い気持ちよくスムーズに物事が進みそうなものだが、今回に関してはむしろ逆。
描いてはならない私欲
求められるはずのない望み
己を殺すことがこれほど苦痛だったことはない。
あなたの素直すぎる想いが
受け止めることのできない、その言葉が
ただただ、未熟な俺のメッキを剥がしていく。
でも見られるわけにはいかなかった。知られることも許されない。
執事でない俺自身を
私欲のカタマリを
あなたの目に映る私は
あくまで
執事
なのだから。
…そう
だからあってはならないのだ。
お嬢様のためでなく、俺自身が
何かを望むことなど
何かを欲することなど…