第1章 ◆Fly high◆(執事サイド)
「…そういや、結局一度も見せていただけなかったな…」
見たら鼻血噴くとまで煽られた、美月のウエディングドレス姿。もちろん煽った本人、美羽の妨害によって。
さぞお綺麗だったろう。想像だけでも…鼻血は出ないが、別なものがいろいろ出てしまいそうになる。ま、出さないけど。休暇中とはいえまだ執事だし。いい大人だし。人目もあるし。
美月が不本意な結婚を強いられることに誰より反発を覚えていたのは、実は妹の美羽かもしれない。もちろん当人だって納得いってないだろうが、それはもう彼女が生を受けた時点で決まっていたこと。変えられない…運命。
それに、俺の知らないところで何度か顔合わせという名のデートもされていたようだし…。
むろん聞かされてないのに何も聞くわけにいかないので、美月とそういう話はしなかったが、おそらく、俺が思うにだが、本人はそれが“デート”だという認識はなかったのではないか?と。
実際、パーティーや何やでお嬢様たちが出席された場は数知れず。むろん大財閥北条家のお嬢様だからというのもあるが、何より二人とも容姿端麗、そういう場に映えるのだ。業界ではちょっとした美人姉妹で通っている。
だからまあ、たとえ二人っきりだったとしても、その延長線上…程度にしか考えてなかったんではないか、と。ある意味、それもお仕事というか。おそらく接待モードで行ってるだろうし。あ、いわゆる“大財閥北条家の美人姉妹”モードね。完全なる外面モード。