第5章 「恋」
「昨日…?王馬は昨日もここにおったのか」
「そうだよ!オレと逢坂ちゃんは秘密の関係だからね!」
「んぁ…⁉︎」
「ただの友達っすよ」
「恋人以上、友達未満の関係なんだよ!」
「ど、どういう立ち位置じゃ…⁉︎友達ではないのか…!」
『友達だよ』
「友達じゃないよ!」
『傷つく訂正の仕方しないでくれる?』
チョコを渡そうと思っている相手とチョコ製作をする。そんな不思議な空間で、逢坂はぼんやりと、(この流れでこの3人に渡さないと角が立つよな)と考えていた。
「逢坂ちゃんはチョコ作らないの?」
王馬の指摘を受け、男性陣の視線が逢坂の手元に注がれる。逢坂は赤松と夢野の手伝いばかりで、自分の分のチョコを作っているようには見えない。誤魔化そうと思っていたのに、と逢坂が呟く。
『…みんなが帰ったら作るよ』
「とか言って寝そうだよねー。どうしようもない包丁さばきの赤松ちゃんと作業が絶望的にトロい夢野ちゃんは、最原ちゃんと天海ちゃんに任せておいてさ。オレと生チョコ作ろうよ!」
『…生チョコは作るっていうのかなぁ。すぐ出来るよ』
王馬が袖を捲らずにチョコに触れようとするので、動かないで、と指示して袖口を捲っていく。その時、ふと、みんなに混ざってチョコ作りを観察していたキーボに視線を向けた。
(……?)
「逢坂ちゃんは生チョコ好き?逢坂ちゃんが好きなものなら、チョコじゃなくてもいいよ!」
『え?…なにかな』
「っていうかさ、手作りチョコってこの素のチョコを溶かすんでしょ?これそのままくれればよくない?はい、逢坂ちゃん!」
『動かないで』
王馬が逢坂の口元に、原型のままのミルクチョコを差し出してきた。逢坂は王馬の袖口を捲っているため、両手がふさがっている。ぐいぐいと口にチョコを押し付けられ、逢坂がバギィ!と男らしくチョコを咥えた。
『動くなって』
「あ、オレの分も食べたー。しょうがないから逢坂ちゃんの口移しで我慢するしかないかー」
『唾液でどろっどろにしたの食わせてやろうか』
「えっ、本当に?…罰ゲームかご褒美か迷うところだけど、そんなのどっちでもいいよね!今すぐに食べさせてほしいな!」
『嘘だよ、嘘です。喜ぶな』