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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第5章 「恋」




「キーボ君にお伺いします!あなたは、何が出来るのですか?あなたの存在理由は?」
「え……えっと……」


逢坂に視線をやると、彼女は穏やかに笑い、キーボに任せるよ、と言った。


「…ボクは、男子高校生の平均化した身体的データをもとに作られています。なので…何が出来るのか、という質問に関しては、人と会話ができ、学習することでより人間に近い反応ができます。特別、瓦礫を持ち上げたり、誰かを抱えて運んだりなど、災害時に活躍できるロボットではありません。それは博士の製作コンセプトが「人間により近いロボット」だからです。拡張パーツをつければ大抵のものは持ち上げられますし、空を飛ぶこともできます。それと…存在理由はという質問に関してですが…」


キーボはまた逢坂を見て、首を傾げた。逢坂との答弁の時には、こんな質問はなかった。


「…存在理由は…」


存在理由は、なんなのだろう。
そもそもその質問の意味がよくわからない。
災害救助用のロボットの姿でいた方が便利で需要があるだろうに、という意味だろうか。
それなら記者の言い分もわかるが、「利便性」はそのまま「そこにいる理由」に直結する問題だろうか。
だとするならきっと、人としても、ロボットとしても中途半端な開発段階の自分にはーーー


「…ボクの存在理由は、ありません」


会場が静まり返った。


「家事も家政婦ロボットの方が上手いですし、力仕事は他のメカの方が優っています。…ですが博士は、ボクがいないと寂しいと言いますし、家族がいなくとも、家に帰ってボクと会話ができることが嬉しいと言います」


逢坂は興味深そうにキーボを眺めている。キーボはその彼女を見て、真剣な表情のまま、言葉を続けた。


「……それはボクが誰よりも人に近いロボットだからだと思います。取り柄はないですが、博士はボクを必要としてくれているはずです。逢坂博士だけではなく、きっといろんな人が、家族や友達…そこにいて欲しい存在を求めて、でも誰も側にいてくれない、そんな寂しい思いをしていると思います。ボクのような人に限りなく近いロボットが増えて、もっと多くの人がそこに他者の存在を感じるようになる…そうです、人が求める他者の存在をボクたちロボットが与える…そんな関係性を築いていくことができます」

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