第5章 「恋」
「狛枝クンは、博士のファンでしたよね」
『…んー…狛枝先輩は希望ヶ峰学園の生徒だったらみんな好きだと思うけど』
「逢坂博士は、狛枝クンのことをどう思っているんですか?」
『…うーん…あの人見かけると今日いいことあるかもって思う』
立った茶柱のようなものですね、とキーボに言われ、そこまでぞんざいには思ってないよ、と逢坂が慌てて訂正した。
「では、逢坂博士に質問です。開発費はいくらだったんですか?」
『スポンサーさんに極秘にするように言われていますので』
「コンセプトを男子高校生にした理由は一体」
『より身近な存在として彼を認識できるようにです。あと、単に女子高校生より男子高校生の方が制服のデザインがしやすかったからです』
「一般化の目処は?」
『現在検討中です』
「今後、彼にはどんな機能を追加するおつもりですか⁉︎」
『彼と議論し決めます。今のところ五感を追加する予定です』
矢継ぎ早に質問をする記者団に、逢坂はキーボよりも機械的に、淡々と答えていく。隣に立つキーボは、想像よりも大勢の人の視線に面食らっているようだった。
「では、次に人型ロボットキーボに質問のある方は挙手を」
学園の卒業生である司会者が場を取り仕切る。学会の一番の目玉と事前情報で知られていたキーボに対し、記者団は我先にと手を挙げた。
『…キーボ?大丈夫?』
「だ、大丈夫です。講堂に来たことがなかったので…こんなに広い会場だとは」
『あー、大丈夫』
みんなじゃがいもだと思いなよ、と逢坂はしれっと表情も変えずに囁いた。その言葉にキーボが「えぇっ」と驚き、その人らしい仕草に記者団がざわついた。
(…彼らはじゃがいも、彼らはじゃがいも、彼らはじゃがいも…)
司会者に当てられた記者の女性がガッツポーズをして、その場に立った。