第5章 「恋」
「会えてよかった。何となくこっちに歩いてきたら逢坂さんに会えるような気がしたんだ。これから講堂へ行くの?」
『はい。狛枝先輩は招待されたんですか?』
「ううん、ダメ元で今年も一般人招待の枠に応募しておいたんだけど、今年は抽選が当たったみたいなんだ。募集がある度に応募してはいたんだけどね。なぜか落ち続けてたのは、今年受かって興奮して死にそうなくらいの幸運が降りかかる為だったんだって分かったよ」
『幸運も降りかかるものなんですか?』
「うん、ボクはそう思うよ。望まない押し付けがましい幸運だってあるし…あ、ボクなんかの話で、これから大舞台に出る逢坂さんの時間を奪うべきじゃないよね。でも、会えて嬉しかったよ」
『…左右田さん呼びますか?めちゃくちゃガクブルしてるんで、狛枝先輩と話したら少し穏やかになるかも』
「うーん、ボクと話したらなおさら穏やかでなんていられないと思うよ。これから長時間座るのに、ドロップキックはごめんだし」
ドロップキック?と聞き返すキーボを見て、狛枝がにこりと笑った。
「それにしても…ボクみたいななんの取り柄もない才能の絞りカスみたいな人間が、人類の希望とまで言われるキミの名付け親になんてなってよかったのかな」
「狛枝クンは類稀なる幸運に恵まれるんですよね。なら、少しボクにも幸運が舞い込むような気がします」
「ロボットのキミが感じる幸運か…面白そうだね。キミにとってどんなことが起こったら幸運なの?」
「…そうですね。…例えば、逢坂博士の肩こりが治ったり、出来ないことが出来るようになったらでしょうか」
「はは、肩こりに関しては逢坂さんの幸運だね」
狛枝はカラカラと笑い、また逢坂に視線を戻した。
「応援してるよ。全世界にキミの素晴らしい才能を余すところなくアピールしてきてね!」
『…ありがとうございます』
熱烈に応援してくれる狛枝と別れ、講堂へ向かう関係者通路に入る。
『素晴らしい才能、ね…』