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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第5章 「恋」




他の生徒たちはわたわたと原稿を読み直したり、ブツブツと何かを呟いているのだが、逢坂には一向にその焦りが見られない。キーボは一度、逢坂と学会の答弁で聞かれそうなことと、答えてほしい答えをすり合わせたのだが、練習といえばその程度のことしかしていないように思う。答えてほしい答えといっても、キーボが考えて答えた言葉を一般人にもわかりやすくなるように、逢坂が言葉を選びなおしただけなのだが。


『移動しようか、キーボ』
「はい!」


キーボを外に連れ出したのは学会当日と、研究棟から自宅へ連れて帰るまでの計2日。中庭を移動して、逢坂に連れ立って歩く人型のロボットは目立って仕方がないが、時間帯は夜の為、騒ぎ出す生徒たちはいない。
学校柄、記者会見などを開くための講堂が数年前に設置された。逢坂とキーボはそこに向かいながら、他愛ない会話をする。まさかこれから、全世界が注目し、テレビ中継もされる学会のステージに立つとは信じられない雰囲気だ。


『今年ももう終わりだなぁ』
「博士、予算が降りる前にボクに触覚をつけてくれたのは大丈夫なんですか?この前テレビで、年末決算が凄まじく大変だとやっていました」
『いや、文字通り大変だけど、破産する企業や個人が後を絶たないから大変ってわけじゃないよ。普通に忙しくなるから大変って意味だと思う』
「そうなのですね。…どうしましょう、ボクが案外期待はずれで予算が削られてしまったら」
『キーボも予算の心配してくれるの?あはは、じゃあ頑張って記者団の質問に答えてね』


子どもの頃からスポンサーがついている逢坂としては、学会の参加など慣れっ子だった。希望ヶ峰学園の年末査定を利用した学会は、世界に超高校級の才能をアピールし、学校のPRをする目的が強い。学会会場に入ることが許されているのは、招待された世界的なレベルでの大富豪や、有名企業の社長。マスメディア数百社に、隔年で抽選に当たった一般人の席が設けられることもある。


「あ、逢坂さん!キーボクン!こんばんは」
『…狛枝先輩?』


一般生徒はもう下校指示が出ている時間帯なのだが、講堂に向かう関係者入り口の近くで、狛枝に出会った。彼は制服ではなく礼服を着て、普段よりも数段大人びて見えた。

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