第4章 大嫌いなサンタクロース
おかゆを全部平らげた彼は自主的に布団に潜り、ジッと逢坂を見上げてきた。
食器を片付けようと逢坂はベッドから腰を上げたが、その王馬の視線に気づき、また腰掛ける。
「……今度はちゃんとここにいてよね」
『……うん。王馬が寝るまでここにいるよ』
「あーもー頭痛い。ずっと寝付けなさそうだなー」
『寝ないとダメ』
くすくすと笑い、逢坂が王馬の頭を撫でる。
その手の下から、じっと見つめてくる彼は、どこか瞳の奥が不安そうに見えた。
「寝たらいなくなっちゃうんでしょ」
『…じゃあ側にいるよ』
「嘘だね。逢坂ちゃんにそんな慈悲あるわけないよ」
『うん、ないね』
「素直さって時に人を傷つけるって知ってた?」
『知ってる。私にそんな慈悲はないけど、でも側にいるよ』
「………ふーん」
王馬はうとうととしては、思い出したようにぱっちりと目を開ける。
寝ないように頑張っているのが見ていて分かり、少し面白かった。
投げ出されている彼の手に目が止まり、ぼんやりとキーボの言葉を思い出していた。
「……なに?」
王馬の手を取り、指を絡めた。
何も言わず、彼の頭を撫でる。
王馬は少しの間逢坂にその理由を聞いていたが、何も答えずに微笑んでいる逢坂と睡魔に負け、目を閉じた。
(………もしかして)
逢坂に、王馬が手を伸ばしてきたあの日。
自分はずっと、王馬が安心したかったからだと考えていた。
しかし、きっとその解釈は違う。
あの日安心していなかったのは逢坂だ。
そして彼はあの時、その逢坂を知っていた。
だから手を伸ばしてきたのだ。
自分が側にいると伝えることで、安心させようとしてくれた。
自分の想いが踏みにじられた直後でも、それでも、逢坂を愛しいと思ってくれたのだ。