第4章 大嫌いなサンタクロース
「……何もいらないは、側にいてって意味だよ」
『………』
「…ほっといては、構ってってこと」
『……嫌いなんじゃないの?』
「本気でそう思うの?オレは嘘つきなんだよ?」
『………。』
考えてみれば、わかることだった。
なぜ冷静でいられなかったのだろう。
思い返せば、王馬に熱があるとわかった時から、自分はどこか気落ちしていた。
多少焦っていた気もするし、人の看病なんて数年ぶりで、落ち着かなかった。
『…ごめん』
何もいらないから側にいて。
放っておかないで構って欲しい。
好きだから、側にいてくれるだけでいい。
『…………ごめん』
そんなこと、言ってくれないとわからない。
「……いいよ。逢坂ちゃん傷つけちゃったみたいだし。元はと言えばクリスマスデート台無しにしたオレの方が悪いんだしね。逢坂ちゃん、結構今日楽しみにしててくれたんだよね?オレが熱あるの見てがっかりしてたし」
『……がっかりしてた?』
「うん。違う?」
『……そう、なのかな』
言われれば、その通りだと思う。
今年は一緒にクリスマスを過ごす約束をした人がいて、根拠はなくとも、漠然と、王馬となら楽しいと思っていた。
『……心配も、してたんだよ』
「うん、オレの話聞く耳持たずだったもんね。看病も慣れてないみたいだし。慣れてたら嫉妬でもっと具合悪くなってただろうからいいけどさ」
『……顔見たくないだろうと思って下の階に居たんだよね』
「あまりに放置するから階段から転げ落ちてやろうかと考えてたところだよ」
王馬の手を引き、布団に入るように促す。
ちょっと寝たらだいぶ楽になったから平気だよ!と身体を震わせながら言う彼を毛布で包み、お粥をスプーンに一掬いして、口元に持っていった。
何もいらない、と言っていたわりに食いつきが良い彼を見て、少し安心した。
「あーぁ…好きな子に看病されるのも悪くないけどさ、何も今日じゃなくてもいいよね」
『…まぁ確かに。人混みに出なくていいんじゃない?夜熱が下がってきたら、キーボとケーキ作ったから食べようか』
「この二時間結構楽しんでたんじゃん。いいなー、オレもキー坊にパイ投げしたかった」
『してないから』