第4章 大嫌いなサンタクロース
王馬は逢坂の裾を掴む手に力を込めた。
逢坂は、少し虚ろな目で王馬を見た。
いつもなら分かる彼女の変化。
しかし今日は視界も霞んで、頭が痛くて考えることなどできない。
「…………なんでわかんないのさ。それでもオレの大大大親友なの?」
『…私は、心配してるから提案してるんだよ』
「でもオレはそんなのいらないって言ってるんだから、何もしないでいいんだよ」
『……わかったよ、じゃあお粥作ったら何もしないから。ね?』
逢坂は子どもをあやすように、王馬の頭を撫でた。
そして裾を掴んで離さない手を取って、布団の上に置いた。
『すぐ戻るから』
「…………逢坂ちゃん」
ベッドを少し離れたところで、王馬に呼び止められた。振り向くと、彼は逢坂に背を向けていて。その表情はわからなかった。
「…ほっといてよ。逢坂ちゃんなんて嫌い。お粥も何もいらないから」
逢坂は一瞬足を止めた後、何も言わずに寝室から出ていった。
二時間ほどしてから、王馬のところに戻った。
時刻はもうすぐ夕方。
今年も変わらず最悪なクリスマスだったように思う。
彼は扉に背を向けて横になっていた。
ヤッチー君をまた可哀想になるほど、潰して抱きしめている姿が見受けられる。
逢坂がベッド側に座っても、彼はこっちを向かず、知らんぷりを決め込むようだ。
『…ここに置いておくから』
声をかけても反応がない。
『……じゃあね』
彼に背を向けてベッドから腰を上げた時、手を引っ張られた。
逢坂はバランスを崩し、ベッドに仰向けに倒れる。
引き倒した彼女の頭の方に座る王馬の顔が、逢坂の顔を覗き込むように、視界に入ってくる。
「…………なんでほっとくの」
『………え?………ほっといてって言うから』
「なんで出てったの。何もいらないって言ったじゃん」
熱に浮かされてなのか、王馬はとても辛そうな顔をする。
その表情はまるで、拗ねた子どものように、不機嫌そうだった。