第4章 大嫌いなサンタクロース
『…また誘うよ』
「嘘だね」
『嘘じゃないって』
「嘘」
『……そんなに嘘にしたいなら、してあげてもいいけど』
「嫌だよ、嫌に決まってんじゃん!ほんと逢坂ちゃんの冗談は意地悪いっていうかさ!」
(…そんな赤い顔で怒られても)
王馬の頭をポンポンと撫でると、身体を少しだけ離した彼の、熱のせいで潤んだ大きな瞳がこちらを向いた。
顔が近くて、なんだか落ち着かない。
『……ほら、横になってて。何か飲み物と食べるもの持ってくるから。…そういえば王馬、家族には連絡した?』
「知ってるよあいつらは。大丈夫」
『…ふーん?まってて』
王馬を引き離し、ベッドから腰をあげる。
遊ぼうよ、といつもよりゆっくりした口調で王馬が説得してくるが、はいはい、と流してキッチンへと向かった。
「博士、王馬クンは起きてましたか?」
『……うん、熱があるみたいだから今日は中止かな』
「え、そうなんですか。ボクも何か手伝います」
『じゃあ、氷枕と…』
キーボに指示を出して、とりあえず水を王馬のところまで持っていくと、彼は横になり、目を閉じていた。
やはり身体が重いのか、と独りでに納得し、ベッドの近くまで行ったところで、王馬がパチリと目を開けた。
「…………逢坂ちゃん、今日は白衣着てないの」
『うん、作業の予定ないし』
「白衣なんて…今日着ないでいつ着るのさ」
よくわからないいちゃもんをつけてくる彼の枕元に、水のペットボトルを置いた。
プァンタがいい!という形容し難い申し出を無視して、ベッドから離れようとした時、王馬が逢坂の服の裾を引っ張ってきた。
「もう何もいらないよ」
『…でも、お腹すいてるよね。お粥作らないと』
「…いらない」
『何か食べないと』
「いらないって。そんなのいらない。勝手に決めつけないでよ、別にオレはお粥なんて食べたくないし」
『……』
いらない、という単語は嫌いだ。
少しだけ、逢坂の鼓動が速くなる。
だるそうにしている王馬にさえ、食ってかかってしまいそうになり、一度深呼吸をして、聞いてみることにした。
『…じゃあ何が欲しいの?』
「……なんもいらない」
『言ってくれないとわからないよ』
「……なんもいらないんだって。意味わからないの?」
『わからないよ、それだけじゃ』