第4章 大嫌いなサンタクロース
「もー逢坂ちゃんは積極的だなー。そういうのはデートの最後にとっておくものだよ?疲れちゃうからさ」
『違うわ。いいからスカーフとって』
「何が違うの?人にお願いする態度じゃないよね?」
『熱があるんじゃないかと思って』
「熱?誰が?」
『王馬が』
されるがままになっている王馬のスカーフを取り、体温計を渡そうとするが、彼は手を伸ばしてくることなく、代わりに自分の襟元をグイッと引っ張った。
「………熱かー…だからこんな身体起こせないのかな」
『起きてたの?』
「うん、やたら逢坂ちゃんオレの寝顔見るなーって思ってたんだけど、なんだぁ…裏切られた気分だよ」
『腕下ろして。少しこのまま』
王馬の腕を掴んだまま、固定する。
王馬はいつものように話しかけてくることはなく、逢坂を見つめた後、また目を閉じた。
体温計が鳴り、逢坂は体温計を取ろうとしたが、王馬が素早くとってしまった。
「………36.9度。大丈夫、平熱だね!もー心配性なんだからー」
ピッとボタンを押して画面を消してしまう王馬。
しかし逢坂は特になんの反応もせず、ベッドに腰掛けた。
王馬から体温計を受け取ってボタンを押し、再起動させた。
『38.5℃。今日は安静にしないと』
「前回測った時の数値が出るやつか…!やだよ、安静になんてしてらんない、だって今日は24日だよ⁉︎」
『だから何。体調悪いなら横にならないと』
「悪くないよ。オレの平熱38℃台だからさ」
『はいはい。食欲は?』
「七面鳥とローストビーフなら食べられるかな」
『ほんとに言ってる?本気で買ってくるよ』
「…………」
案外気に入っていたのか、王馬がヤッチー君を腕の間で中身が飛び出そうなほど締め付ける。
そして、急にむくりと上体を起こした。
自覚すると尚更辛くなってきたのか、王馬は、ぽす、と逢坂の肩に顔を埋めるようにもたれかかってきた後、吐いた熱い息を首筋にかけてくる。
彼の頭に触ってみると、やはり普段より数段熱く、首筋が汗ばんでいることが分かった。
「だってさー…逢坂ちゃんが誘ってくれたのなんて初めてじゃん」
消え入るような王馬の声。
嘘っぽい言葉には聞こえない。