第4章 大嫌いなサンタクロース
身体を起こし、すっかり冷えてしまったコーヒーを飲んだ。
苦味が強くなっている気がする。
あまり美味しくなさそうにコーヒーを飲む逢坂を見たまま、キーボは考える仕草をとった。
「特にありません。博士が欲しいものはなんですか?」
『…私も特にいらないかな。本当にないの?つけてほしい機能でもなんでもいいよ』
「なんでもですか。……あ、では質問させてください」
『…質問はいつでもしてくれて構わないんだよ。どうぞ』
「博士に家族はいないんでしょうか」
『……いないよ。元が孤児院育ちだから』
「なるほど。では、次の質問です」
『待って、キーボ。そんな聞き方しちゃいけないよ。周りの人と比べて自分が持っていないものについて聞かれた時、人は過剰反応しやすいから。もっと前置きをして、慎重にならないと』
「家族がいないのは、持っていないことになるのですか」
『……この年代の人間で、家族が1人もいないのは珍しい方だからね』
「そうですか、すみません。クリスマスは家族と集まるものだというデータがボクの中にあったので、ではなぜ博士は1人なのかと考えてしまいました」
『日本じゃ恋人と過ごす人も多いよ』
「なるほど、それが王馬クンなんですね」
『……うん?いや、王馬は私の恋人じゃないよ』
「違うんですか?…恋人ではなく、友人でしょうか」
『うん』
「では博士は、家族とも恋人ともクリスマスを過ごさない人種、ということですね」
『はは、そういうことになるかもね。でも私にはキーボがいるから寂しくないよ』
「………ボクがいないと寂しいですか?」
何の気なしに、ただ言葉の裏付けをしているのだろう。
逢坂は、まっすぐに見つめてくるキーボの頭を撫でた。
『寂しい』
「クリスマスだからですか?」
『…いや、いつだって寂しいよ。キミが人格をもって、私と会話をしてくれることがとても嬉しい』
「ボクも必要とされて嬉しいです!」
ニコリ、とキーボは笑ってみせる。
その笑顔に癒されて、心が少し落ち着いた。