第4章 大嫌いなサンタクロース
<いいんすよ。なんつーか…俺も楽しかったんで。逢坂さんと付き合いたいとか、そういうんじゃないんすよ。…もちろん、逢坂さんから歩み寄って来てくれたら嬉しいんすけど>
『……あ……で、電話くれたのは私がプレゼント気づかなさそうだから?』
<いや、単純に声が聞きたくて>
『………』
<ははっ、どんな顔してるかすげー気になるっす。こっちはもうクリスマスムード満点で、カップルがうじゃうじゃいるんで…ちょっと逢坂さんの声が聞きたくなったんすよ>
『お……おぉ……メリークリスマス……』
<…良い休日を。じゃあまた!>
電話が切れて、逢坂は少しの間放心状態になる。
落ち着こうと、とりあえずコーヒーをいれ、ソファに座った。
(……天海が、私のことを好き?)
学内外にファンクラブを持つ彼だ。
そんなことがあり得るのだろうか。
それらしいことを言ってはいたし、そう考えてみればあの唐突なハグの意味も、わかる気がする。
『……次、どんな顔して会えば…』
ーーーでも、俺は好きですよ
ーーー俺の背中を突き飛ばしてくれるキミのこと、大好きなんです
(……。)
天海の電話に出てから、気づけば30分が経っていた。
ソファに横になりながら、冷めていくコーヒーをただただ眺めた。
どれだけ考えたってどうしようもない。
応えてあげたくとも、自分には天海を友人以上に、特別に愛する気持ちがあるとはいえない。
そのことに、彼は気づいていた。
だから付き合いたいわけじゃないと、わざと言ってくれたのも、わかってしまった。
『……』
遠くから、微かな機械音が聞こえてくる。
なんとなく、自然に話すことができない気がして、目を閉じた。
「博士?」
キーボの声を、すぐそばで聞いた。
だから結局、無視することができなかった。
彼に、出来る限り嘘はつきたくないからだ。
『…起きてる。おはよ、キーボ』
「早起きですね、おはようございます。ソファで二度寝しては風邪をひいてしまいますよ」
『……』
「どうしました?…具合でも悪いんですか?」
『……キーボ、クリスマスイブだよ、今日は。何か欲しいものはある?』
「え?…あ、クリスマスは贈り物をする習慣があるんでしたっけ」