第4章 大嫌いなサンタクロース
彼は何かむにゃむにゃと呟きながら、他人のベッドで気持ちよさそうに眠っている。
ダブルベッドの端に横になり、彼を観察したが、特に暴れている様子はない。
寝返りを打っただけか、とまた背を向けて眠ろうとしたところで、また王馬は逢坂の背に抱きついてきた。
そして、今度は抱き枕を潰すかのように逢坂の腰をギリギリと両腕で締め付けてくる。
(……いでででいたいいたい、とても痛いその細腕のどこにそんな力が……!)
圧迫に耐えつつ、先ほど逢坂と一緒にぞんざいに床に打ち上げられた抱き枕のヤッチー君を引っ掴む。
王馬と自分の間にイルカの彼をねじ込み、彼越しにぐぐぐと力を入れて、どうにか王馬を引き離した。
「………ちょっと、逃げないでよ……」
『誰だって逃げるわ!』
寝言を言う彼に、ヤッチー君を人質として明け渡し、逢坂はベッドからずり落ちるように這い出した。
(………寝られない)
男女の高校生が添い寝なんて、もっとときめくイベントであって欲しいものだ。
鼓動は速まりこそすれ、その理由は隣に眠る異性の存在に心高まったからではなく、単に命の危険を感じたからだった。
締め付けの痛みですっかり目の覚めてしまった逢坂は、リビングに降り、王馬のメッセージの通知が多すぎて電源を切っていた携帯を確認することにした。
『……うわ、何百件きてるんだ…』
その8割は王馬のメッセージに違いなかったが、その他にも何人かからメッセージが入っている。
逢坂は携帯を肌身離さず持ち歩くタイプではない。
一日の終わりと始まりに確認すればいい方で、思い起こせば、最近は忙しくてその頻度でさえ確認しなかった。
起動させてすぐに電源が落ちそうになる携帯を充電機に刺し、最近のメッセージから確認していく。
その途中、天海から着信が入ってきた。
こんな朝方に何事だろう、と考えながら、電話に出る。
『…もしもし?おはよ』
<あ、おはようっす。逢坂さん、早起きなんすか?それとも夜更かしの方っすかね>
『…強要された早起きだよ。天海も、どうしたの、こんな朝から』
<いや、俺は今ロスにいて、こっちは昼過ぎなんすよ。逢坂さんが起きててよかったっす>
『……んー?なぜわざわざ海外から』
<俺のプレゼントは見てくれたっすか?>