第4章 大嫌いなサンタクロース
料理に取り掛かろうと王馬から離れた逢坂は、キッチンから戻ってきて、ソファに座る王馬の前まで戻ってきた。
そのまま王馬の頭を撫でて、困ったように笑う逢坂。
彼女は、笑ってはいたものの、やるせないままだった王馬の気持ちに気付いたようだった。
『…ごめん』
「もういいよ、いつまでも喧嘩してたってつまんないし」
王馬は逢坂の手をパシッと叩いて振り払った。
『……あのさ』
「なに。言っとくけど、総統様の顔も三度までだからね」
『今何度目?』
「6回目」
『三度までじゃないじゃん。……明日、一緒に過ごそうよ』
それは、思ってもないお誘いだった。
「…どういう風の吹き回し?いつもオレが追いかけ回してるだけなのが可哀想になっちゃった?」
『…ううん。今日、天海と2人で過ごしてみて、やっぱり学校で見る姿と違うなって思ったから』
「でもオレとは学校以外の場面でも会ってるでしょ?寄り道したり遊びに行ったりもしたし」
『時間が足りないよ。王馬をもっと知るには、もっと時間が必要だと思う』
「だからもっと一緒にいようってこと?」
『…恋人とかはよくわからないけど。でも王馬をもっと知りたいとは思う』
「……しょうがないなぁ、そこまで言うなら忙しい合間を縫って、明日も会いに来てあげるよ。悪の総統と休日を過ごせるなんて超レアなんだから、ちゃんとオレの労力に見合った対応を心がけてよね」
王馬はちょっとだけ機嫌を持ち直したのか、キー坊をからかってくるよ!と言いつつも、呼びに行ってくれるようだった。
王馬の好きなオムライスを作りながら、ぼんやりと王馬の言葉を思い出す。
彼はやたら、自身と周りの人間に向ける逢坂の扱いに差がないことを気にしている。
逢坂にとっては、中学に入ってから出来た初めの友達が最原だったため、異性と2人で遊ぶことに抵抗はなかった。
だから天海とも王馬とも、それほど抵抗なく遊べたのだが。
(…高校から一緒になった王馬からしてみたら、唯一そこだけが、自分は特別だって思える点だったのかも)
彼は最原と距離がある時の逢坂しか知らないはずだ。
なら、逢坂が2人きりで遊びに出かけるなど、あまり想像がつかないだろう。
(……黙っておこう)