第1章 ガラスの向こうの横顔
天海と一緒に手を振り返す。
最原は少し照れたように、はにかんだ。
天海は逢坂を通じて、最原と赤松を知っている。
2クラスに2人ずつ分かれてはいるが、なかなか気が合う4人だ。
逢坂はふと、最原の隣にいる紫の子を見て、一瞬違和感を感じた。
彼がなぜか無表情に戻って、こちらを見ていたからだ。
視線が合っているようで合っていないような気もしてきた。
見られているのか、いないのか。
「あ、もうこんな時間なんすね。逢坂さん、はやく食べちゃわないと」
『ほんとだ』
一度天海に視線を逸らし、ちら、ともう一度1- Aの方を見る。
しかし彼は、最原と笑って話しながら、窓際から離れて行ってしまった。
(……なんだったんだ、さっきの…)
「逢坂ちゃん、おはよ!」
(……あれ?)
「おはよう、逢坂さん」
『…おはよ。最原、どうしてこの子がいるの?別に嫌な意味じゃなくて、ただの疑問ね』
朝、逢坂はいつも最原と通学している。
特に特別な関係というわけではなく、逢坂の通学路のルート上に最原が一人暮らししている部屋があるからだ。
そして10分程度歩いたところにある地下鉄の駅で、赤松、天海との待ち合わせがある。
現在地は、最原の借りている部屋があるアパートの前。
いつも最原は、逢坂が来る前にアパートの前に立って、眠そうな目をこすりながら彼女を待っている。
しかし今日は、遠目から見た最原のそばに人影があった。
眠くてぼーっとしている頭の中から彼の顔を思い出し、ようやく逢坂は声をあげたのだった。
「あ、うん…実は、王馬くんが住んでるところも近くのマンションらしいんだ。通学してた時に僕を見かけて、声をかけてくれたらしいんだけど…」
『……え?たまたま?』
「うん、いつも通ってるルートと別の道を行ってみようかなーって思って。そしたら最原ちゃんに会ってびっくり!ねぇねぇ、オレも一緒に行っていい?」
『そうなんだ。私は構わないけど、他に二人いるからたぶん一人の時より学校に着くの遅くなるよ。時間大丈夫?』
「赤松ちゃんと、天海ちゃんだよね。ぜーんぜん、大丈夫!」
「……逢坂さんがいいなら」