第4章 大嫌いなサンタクロース
『……違う。違うけど…』
「……逢坂ちゃん、何がそんなに怖いの?」
『え?』
「オレがこうやって真意を聞こうとすると、いつも俯いて言葉に詰まるよね。だからある程度警戒されなくなるまでは距離は詰めないでおこうって思ってたけど…まだダメなの?がっかりさせないでよ、オレを襲った大胆不敵さはどこにいっちゃったのさ!」
『……襲ってないよ』
「やっぱりオレが嘘つきなのがいけないのかな?信用できない?逢坂ちゃんともっと仲良くなりたいけど、でも嘘をつくのはやめられないし…うーん…嘘をつくのをやめるなんて、生き様を否定するようなものだよね…一組織の総統として、それは絶対に譲れないなぁ…」
王馬はブツブツと独り言を言い始めた。足を止めてくれている間に、彼を納得させる言葉を考えようとしたが、いくら考えても思いつかない。
『………あのさ、私……彼氏が欲しいと思ったことがなくて。…それは、友達っていう関係ですら、私には精一杯だからなんだけど』
逢坂にしては珍しく、簡潔にまとめられていない論理的とは程遠い話し方だった。
だからこそ王馬は話を遮ることをせず、また黙って、彼女が話し終わるのを待とうとする姿勢を見せた。
『……その……だから、意図的に王馬をないがしろにしたいわけじゃなくて、目標のハードルが高すぎて……実践までいかないというか、まだ仮定段階で』
「たまに理系っぽい言葉挟んでくるせいで全然頭に入って来ないや。らしくない言葉使ってないでいつもみたいに雑に話せば?」
『……雑に…』
そんな風に思われていたのか、という若干の精神的ダメージを受けたが、いつも通り話せというのはありがたい。
『…オブラートに包まず言うと』
「うん、なに」
『王馬を恋人として信用しようという気になれない。友達としては楽しいけど関わりすぎたら危ないやつだと思ってる』
「うわぁ、遠慮がなさすぎて逢坂ちゃんに友達って呼べる友達がいないのも頷けるよ」
『…3.4人はいるよ』
「0も4も同じだよ」
『おい私の大切な友達に四捨五入するな』
「でもさー、付き合うとか友達になるとか、そんなの考えたってどうしようもないよね。逢坂ちゃんがオレの事好きなんだったら、こんな押し問答なんかせずにお互い歩み寄れてるはずだもんね」