第4章 大嫌いなサンタクロース
「オレは逢坂ちゃんにとって悪者なの?」
『……え?』
「だから家の前であんな見たくもないもの見せてきたの?オレが邪魔なら…嫌いなら、そう言ってくれれば、いいのに。二度と顔見せたりしないのにさ」
右手の指先を擦り合わせながら、さもつまんなそうに王馬が呟いた。
口を一直線に結んだ彼の表情を見る。
彼と目が合って、一瞬だけ、王馬がとても寂しそうな顔をした。
「でもさ…悪いのは本当にオレなの?逢坂ちゃんにキスしたのも、すがったのもオレだった?好きでもないのに、中途半端に優しくしたのもオレだったっけ」
ソファから飛び起きて、王馬が玄関へと歩いていく。
ハッとした逢坂は王馬の後を追いかけ、その手を掴んだ。
『待って』
彼は振り返り、逢坂ちゃん、と小さく呟いた。逢坂は呼吸を整えて、今の状況を整理しようと頭を巡らせる。
しかし、まず言わなくてはいけないことがある。
『省みなくてごめん』
王馬はただじっと、逢坂の言葉に耳を傾けている。
逢坂は頭の中にある言葉の引き出しを片っ端から開け放して、必死に王馬を引き止める言葉を考えた。
『えっと……あんなもの見せた後で信じられないかもしれないけど、私は王馬としか、あの日のキスしか知らない。だから、天海とは何もないよ』
「……だから何?」
『だから、まだ帰らないでよ。外は寒いし、雪も降ってるし。風邪を引くから』
「オレが風邪引くから、帰らないで欲しいの?」
『……違うよ』
王馬が期待している言葉は、彼に初めて触れたあの日からずっと理解している。
けれど、それを口に出そうとすると、そんなこと思っていないと否定する自分が心の中に現れる。