第4章 大嫌いなサンタクロース
『…天海と遊んでた』
「2人で?なんで?」
『…なんで?なんでって…2人がいいって言われたから』
「その意味、逢坂ちゃんはわからないわけじゃないよね?でも行ってあげたの?なにそのボランティア精神、尊敬しちゃうなぁ」
『別に、ボランティアってわけじゃないけど。楽しかったし、息抜きになった』
「それってさ、オレと一緒じゃダメなわけ?あーそっか、誰でもいいんだっけ。昨日はオレが側にいなかったもんね。だから天海ちゃんにしたんだ?本当に節操がないよね」
笑みを浮かべる彼の本心は、冷え切って、笑ってなどいないことは明白だ。
しかしどうしても逢坂には、王馬が問いただしてくる理由がわからなかった。
『……あのさぁ、王馬のパーソナルスペースを勝手に踏み荒らしといて申し訳ないとは思ってるよ。でもだからって私の行動の基準を全部王馬に合わせる気はない。それに、何見たのか知らないけど、私は王馬にしたようなことも、すり寄るようなことも天海にはしてないし…友達としてしか遊んでない』
「言葉で証明するのには限界があるんだよ、逢坂ちゃん。誰だってその気になれば嘘はいくらでもつけるし、人を騙せるんだから」
『………』
「ねぇ、よく話すようになって数ヶ月しか経たない同級生に、嫌な夢見たからってその気がないのにキスしてくる子を、どこまで信じられると思う?なにもかも生きることに投げやりで、自己肯定感なんて皆無のその子が、自分以外にも同じことをせがんでるって普通は考えると思わない?だってオレはその子にとって特別でもなんでもない、「誰でもいい」って形容される男の1人だからねー」
気まずい沈黙が2人の間に流れる。
王馬が、逢坂が立つキッチンが見えるソファに腰掛ける。
笑みを完全に取り去った彼から視線をそらした。
なんて謝ればいいのだろうか。
王馬は逢坂が考え終わるよりも先に、また口を開いた。