第4章 大嫌いなサンタクロース
はて。どこに行ったのだろうか。
ぼんやりと考えを巡らせながら、家の中を歩き回ること10分。
『いいや、飽きた。ご飯にしよう』
「飽きたって何‼︎ちょっとは反省しなよ逢坂ちゃんの浮気者‼︎」
どうやって登ったのか、室内の空気を循環させるために設置してある頭上のプロペラから、荒々しく王馬が飛び降りてきた。
駆け寄ってくる彼に背を向けながら、夕食の準備を始めた。
『一緒に食べる?好きなもの作ってあげるよ』
「なにそれ、そんなんで誤魔化せると思ってんの?3回回ってニャンした後に土下座して『小吉くんごめんね、大好きなのはキミだけだよ』って言った後オレの好きなオムライス作ってケチャップで「逢坂雪は王馬小吉のもの」って書いた後萌え萌えビームしてくれなきゃ許さないから」
『ラインナップが多すぎてトリ頭の私には覚えられないな。とりあえず王馬の好きな玉ねぎ炒めを作ってケチャップで味付けを台無しにした後土下座の体勢で三回回りながら王馬小吉に狙いを定めてレーザービームのようにご飯を投げつければいいのかな』
「取りつく島もないとはこの事だよね。ちゃんとこっち見てよ!罪悪感で目逸らしてないでさ!」
『罪悪感なんて別に…』
「こっち見てってば!」
なぜかはわからない。
きっと、高校に入ってから、他の誰よりも多くの時間を王馬と一緒に過ごしたからだろう。
王馬の思考、表情、雰囲気、声色、言葉の選び方。
そんな些細なヒントを元に、どれだけ彼が嘘で隠そうと、逢坂はいつでも、ある程度の王馬の本心がわかるようになっていた。
だから彼がいつもと同じ様に「怒っているように見える嘘」をついて騒いでいる様には思えなかった。
ほんの少し上ずった彼の声と、焦燥感が伝わってくる。
『……』
振り向くと、やはり王馬は本当に怒っているのだという事が理解できた。
逢坂を責める様な目で、じっと見つめてくる彼。
状況がわからずオロオロしているキーボに、少し自室へ行っていてほしいと伝えた。
『……なんでそんなに怒ってるの?』
「今日なにしてたの」
王馬は矢継ぎ早に尋問を始めてくる。
ピリピリしている彼の癪に触らないように、できる限り素直に答えることにした。