第4章 大嫌いなサンタクロース
天海とのデートから帰ると、逢坂の家は騒然としていた。
逢坂は玄関に立ち尽くし、目の前を駆け抜けていく小さなロボットや家事代行ロボットの数を数え、完成品が全機起動しているのを確認した。
『……どうなってんの?』
目の前をロボットの大軍が百鬼夜行のように進んでいく。
その波にもまれながら流されていく、キーボの姿があった。
「あっ、博士!み、見ないでください!」
なにを隠したがっているのか、キーボは逢坂の姿を玄関に発見すると、あわあわとロボットの波をかき分けて近寄ってきた。
「王馬クンが手当たり次第にロボットを起動させてしまって…止めて回ってるんですけど起動させる彼の方が素早くて」
『…対象1~45号、声紋認証逢坂雪、命令式【停止】』
逢坂はいつもより声を張って、ロボット達に命令を下した。
急に立ち止まる家政婦ロボットに、キーボが頭をぶつける。
ようやく靴を脱いだ逢坂は家の中を見渡して、疑問を抱いた。
『王馬はどこ?』
「え、その辺にいませんでしたか?」
『………いつから追いかけっこしてたの?』
「ついさっきです。王馬クンが博士が用意したプァンタを飲み干しちゃって、新しく買ってくるというのでセキュリティを解除したんです。けど、扉を開けた瞬間引き返してきて…」
『………うーん、まずいな』
「まずいですか?」
『………まずい』
見られた、ということだろう。
天海が逢坂に覆い被さるように抱きついてきた、あの瞬間を。
深くため息をつく逢坂の気持ちを知ってか知らずか、大丈夫ですか?とキーボは的確な表情と言葉を向けてくる。
『大丈夫だよ。王馬を探すのを手伝って』
逢坂はとりあえず、自室に向かうことにした。
三階建ての自宅の、一番上の一番奥の部屋。
まだ王馬を招き入れたことはなかったが、今日キーボに出した指示通りになっているなら、彼は逢坂の部屋に足を踏み入れたはずだ。
『王馬ーただいま』
部屋を開けてすぐ、声をかけた。
しかし部屋はがらんとして、人の気配はしない。
(……)