第3章 不在の代償
いつもの調子に戻った天海と映画を見て、雑貨屋を見て回った。
本屋で天海が旅の移動中に読む本を選び、夕方ごろ帰路に着いた。
帰る頃になって、天海はあれこれと用事を思い出し、帰り道もいくつか寄り道をした。
すいません、と笑う彼は、謝る割には悪びれていなかった。
「あーぁ、終わっちゃうっすね、1日が」
『そうだね。久しぶりに休みの日に出かけた気がする』
「王馬君とはデート、しないんすか」
『ほぼ家かなぁ。王馬、楽しそうにはするけど、人が多いところに行くと気が抜けないみたいなんだよね』
「やっぱ身の危険を感じる場所だからっすかね。人混みとか危ないだろうし」
『そうかも。だからあまり出歩かない。誘ってくれてありがと、天海』
「こちらこそ、楽しかったっす。家まで送らせてくださいね」
『えっ。……うん、わかった』
ふと、家にいるかもしれない王馬のことを思った。
予想より大幅に遅くなってしまったし、もし待たせてしまっているなら、帰った途端きっとものすごい勢いでスネられることだろう。
「…逢坂さんは」
『うん?』
「……なんでもないっす」
『なに?気になる』
「……彼氏、いらないんすか?」
前を向きながら、視線を合わせずに天海が問いかけてくる。
逢坂は少し思案したあと、返事をした。
『いらない』
「…誰かが求めてきたとしても?」
『うん。私はメンタル豆腐だから』
「……?」
『誰かを好きになって、それを失ってしまうのが怖い。だから好きにならない』
「最原君は違ったんすか?」
『…最原は…私の三番目の友達だから。そういう好きとは違うよ』
「なんとも中途半端っすね」
はは、と笑ってから、天海は2人が知り合ったのは中学からだったと思い出した。
ということは、逢坂は小学生時代、友達が2人しかいなかったことになる。
(…まぁ、でもそんなもんか)