第3章 不在の代償
自分にも友達と呼べる人が出来たのは、逢坂と出会ってからだ。
そう考えると、天海の方が友達は少なかった計算になる。
友達でよかった、と言った時。
彼女は今まで見せたことのない喜び様だった。
(……きっと、何かそこに原因があるんすよね)
逢坂が1人でいる時、ずっと遠くを見つめている理由。
1人が好きなわけではないのに、進んで自分から人に関わろうとしない理由。
「……でも、逢坂さんは結構寂しがりだったりもしますよね。もし俺が逢坂さんの側にずっといられたら…旅なんてしてなかったら、俺にも可能性あったんすかね」
『…なんの話?』
「だから彼はきっと、逢坂さんからできる限り離れようとしないんだろうし」
独り言を呟く天海を見上げると、彼は温かい手で逢坂の頭を撫でた。
「…俺からは、ここまでが限界っす」
『……?』
逢坂の家の前に着いた時。
天海が優しく、逢坂の身体を抱きしめた。
住宅街で、通行人はいなかったが、逢坂は一瞬面食らった後、慌てて天海を引き剥がした。
『ど…っどう………え?なに?』
「……もしこの先を望んでくれるなら、逢坂さんから来てください」
じゃあ、また学校で。
と天海は精一杯笑い、逢坂に背を向けた。
彼の行動に呆然とする逢坂。
『………え………えぇ……?』
放心する彼女のつぶやきは、しんしんと雪の降る空に消えていった。