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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第3章 不在の代償




入学式からもうだいぶ日が経っていたのに、逢坂はまだその天海の言葉の意味を考えていたらしい。
興味がなさそうにしていた逢坂。
なのに、ずっと考えていたのかと気づいたら、なんだかとても嬉しくなった。
だから、自分がダメな兄貴だと思うようになった理由を逢坂に話すことにした。


『それのどこがダメなの?』
「……え?」
『待ってるんだったら行ってあげなきゃダメじゃん。何も間違ってないと思うけど』


諦める、という選択肢を考えもしない彼女。
誰かに自分の旅する目的を認めてもらえたことなんて初めてだった。


「…もう何年も経ってるんすよ?」
『だから何?会えばきっとわかるよ、天海の妹ならきっと目を引くような美人だろうし』


逢坂は躊躇いなくそう言って、ダメ兄貴なんかじゃないよ、と否定した。
その反応が嬉しくて、むず痒くて、天海はなんとも言えない温かい気持ちに包まれながら、呟くように彼女に訴えた。


「……俺ら、みんな血が繋がってないっすから」
『え、それは初耳だよ』


笑う天海の横で、逢坂は真剣にどうやったら成長した妹たちを見つけられるか、その方法を思案し続けた。
その彼女のしかめっ面を見て、天海はぼんやりと考えた。


(………あぁ、いいなぁ)












逢坂さんって、いいなぁ
























旅に疲れると、いつも逢坂の笑顔を思い出した。
彼女を思い出すと、会いたくて仕方がなくて。
旅を切り上げて家に帰ろうという気持ちになった。
心が擦り切れて、疲れ果てていても学校に向かった。
いつも、いつだって彼女はそこにいた。
だから、彼女がいない日を過ごして、初めて気づいた。
彼女がそこにいない理由すら知らない自分を、いつまでも彼女が待っていてくれるはずがないと。


だから、大好きな彼女と二人きりで過ごして、全てを忘れるくらい彼女に没頭してしまいたかった。


もし、彼女が忘れろと言ってくれたなら。


そんな淡い期待も、心の何処かにあった。
情けない兄だと思う。
誰かに言われるまでどちらかを選べないなんて、情けない男だとも思う。
でも、それくらい家族が大切だった。










同じくらい、彼女が好きだった。






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