第2章 超高校級のロボット博士
「オレが答えてあげようか。オレと逢坂ちゃんは、秘密の関係なんだよ」
「秘密の関係……?」
『王馬静かに。キーボ、私は君に嘘をつかない人間でありたいし、答えられることには何でも答える。でも、答えられないこともあることは知っておいてほしい』
「……なるほど、わかりました。では博士にとって、この質問は答えたくない質問だったんですね」
『……うん。ごめんね』
「いえ。では次の質問です。結局王馬クンは、博士のなんなのですか」
『……………………』
「……ぷぷ……うぷぷぷぷ……あーーっはっはっは!!鋭い指摘の嵐ー!!」
「え、笑うところでしたか?狙ったつもりはなかったんですが…」
王馬はお腹を抱えて笑い始め、その大爆笑の様子にキーボが機械的に首を傾げた。
答えづらい質問ばかりしてくるキーボに眉を寄せながら、逢坂がぽつりと答えた。
『…大切な人だよ』
その返答を聞き、王馬がぱったりと笑い止んだ。逢坂はまたコーヒーを淹れる作業に意識を集中させ、王馬たちから目をそらす。
彼女にとっての精一杯の愛情表現を受け取った王馬は、ずるいんだから!と逢坂に野次を飛ばしたわりに、満足そうな笑みを浮かべていた。
キーボの鈍いのか鋭いのか判断しかねる質問にギリギリのラインで答えつつ、三人で騒ぎながら夜を過ごした。
電力の補充のため、キーボが数時間の睡眠に入るところで、逢坂と王馬も一度横になることにした。
王馬はやたら二人きりで寝たいと主張したが、セキュリティが心配だからと逢坂はキーボも研究室に寝かせ、二人と一体で夜を明かすことにした。
ローテーブルを挟んで、ソファに横になると、王馬がじっと逢坂を見つめてくる。
何かを求めてくるわけでもなく、ただただ見つめてくる彼のガラスのような両眼は、いつも宝石のように輝いている。
(……これが活き活きとしてるっていうことなのかな)
彼の瞳の輝きに比べたら、自分の瞳の光は何に似ているのだろう。
少し考えて、一番うまい例えは「死んだ魚の目」だと確信し、ひとりでに傷ついた。