第2章 超高校級のロボット博士
『ひどい言われようだ…』
「キミになら何されてもいいって言ったよね」
逢坂がキョトンとした顔をして、王馬を振り返った。
王馬は、逢坂の背中に顔を埋めるような体勢で、表情が見えない。
気になって身をよじっていると、俯いていた彼が今度は上目遣いで見つめてきた。
目が合い、潤んだ彼の瞳に自分の姿が映っているのを見た逢坂は、少しだけ申し訳なさそうに俯いた。
「信用なんかしてない。でもさ、オレはキミとキスをして殺されるならそれでいい」
すぐ近くにある王馬の顔から、不敵な組織の長としての表情が崩れた。
年相応な目つきに戻った彼の髪に、なんとなく触れたくなってしまって。
その気持ちを悟られないように、逢坂はもう一度、視線をそらす。
『………覚えとく。ありがとう』
「ほんとだよ、嘘じゃないから」
『わかってるよ』
「なーんてね!全部嘘だよー!」
『はいはい』
「あーちょっと、ちゃんとリアクションしてよ!オレだけ振り回されるなんてやだ!」
『わぁーびっくりー』
「ほんとに嘘だからね!ほんとのほんとだから!」
『はいはい、それが嘘ね』
「嘘じゃないよ!」
逢坂が王馬の頭を撫でると、彼は少しの間だけ静かになった後、また「嘘だから!」といつになく語彙力のない言葉で照れ隠しをしてきた。
はいはい、と返事をしてなだめながら、逢坂は腰にひっついて離れない王馬を引きずりながら研究室を出る。
『……キーボ、おはよ』
「逢坂博士!よく眠れましたか?」
静かな機械音を立てながら、逢坂の作った人型ロボット46号、「キーボ」が近寄ってきた。
彼の緑の目が人間そっくりに動き、自身の生みの親と、その彼女の腰にまとわりついている「大大大親友である王馬小吉」に焦点を当てた。