第2章 超高校級のロボット博士
「…これは何のキス?」
『…親愛のキス』
「へぇ、唇にするのって親愛なんだ。オレの女性経験を侮ってるのかもしれないけど、その程度の嘘すぐ分かるよ」
『……うん、嘘だよ』
「それで、どこからが嘘なの?」
『……どこからでもいいよ』
「は?よくないよ」
『……』
「よくないじゃん。オレの事、ほんとはどう思ってるの。好きでもない奴にキスするの?逢坂ちゃんはさ」
『……ごめん、誰でもいいんだ』
「……!」
だから、ごめん。
そう言って、逢坂は王馬の唇をもう一度奪った。
清々しいまでに、王馬を利用する逢坂。
彼女は何かを忘れようとするかのように、王馬の温もりに触れてくる。
そんな彼女が嫌いで、愛しい。
彼女に利用されているこの時間が、辛くて幸せで、寂しくて満たされる。
幸福感に浸るには、あまりにも胸をナイフで引き裂かれるような痛みを伴うキスの最中、王馬の頬に冷たいものが触れた。
逢坂の涙だと気づいたけれど、瞑った目を開けようとはしなかった。
見てしまったら、もう切り捨てられないと感じたからだ。
この関係に自分がどれだけ苦しくなっても、もう逢坂を捨てることができなくなる。
「……っは………っ」
愛おしくて、手放せなくなる
何度も唇を重ねて、ようやく逢坂は自分のしでかしたことの重大さに気づいたらしい。
王馬から目をそらし、ごめん、と小さく呟いて、彼女は逃げるように背を向けた。
「ちょっと待ってよ」
彼女のまとう白衣をひっ掴み、王馬が後ろから抱きついた。
逢坂の腰に腕をしっかりと回して、ボスッと彼女の肩に自分の顎を乗せた。
「…逢坂ちゃん、やることだけやって逃げるんだ?キミがそんなに最低な人間だとは思わなかったなー。オレが悪の総統だからってただれた関係に慣れっこだとでも言いたいの?」
『そういうわけじゃ』
「言っておくけど、オレはキミみたいに誰とでもキスしたりしないから。口に毒でも含まれてたらたまったもんじゃないしね」
『……信用してくれてるのにごめん』
「そんな生易しい言葉で片付けないでよ。キミみたいな鼻持ちならない女、信用するわけないじゃん」