第21章 生かせ生きるだけ恨まれる
ーーーオレのせいで雪ちゃんが殺されそうになったのは計18回。今日のは、35回目
きっと嘘じゃない。
ーーーさぁ、ここで問題です。最原ちゃんがさぁ、中学で雪ちゃんと出会って、雪ちゃんと友達らしく、遊びに行ったり一緒に帰ったり、寄り道したり。赤松ちゃんとも仲良くなって、三人でいるようになって、高校に入ってからは天海ちゃんともいるようになって…四人で、何も知らずに普通の学生らしいことしてさ。………で?
全部本当のことだ。
ーーーオレはずっとずっと、彼女と言葉を交わすことすらなく、ガラスの向こうから雪ちゃんを「見守ってきた」わけだけど…最原ちゃんは知ってるの?どうして今日が35回目なのか
見守ってきた?本当なのか?
ーーーオレの言葉の意味がわかる?わかるわけないよね。最原ちゃんは「そっち側」の人間だもんね
僕は大きな大きな解釈間違いをしていたのかもしれない。
計18回。
18回は、王馬くんのせいで逢坂さんが「殺されそうになった」数字。
なら、35回は?
ーーー35回は、王馬くんに関係のないところで逢坂さんが殺されそうになった回数だ
ーーー最原ちゃんさっすがー!超高校級の探偵なだけはあるよ!つまりはさ。53回、雪ちゃんは殺されかけてるんだよねー。
あぁ、僕はなんて馬鹿なんだろう。
ーーーオレに代わって、最原ちゃんが雪ちゃんを守れるって言うなら譲ってやってもいいよ
長い長い話の最後。
王馬くんは、確かに言ってたじゃないか。
ーーーなーんて、嘘だよ!
<何が嘘で何が本当かなんて、わざわざ答えを教えてあげたらつまらないよね?>
つまり彼は、逢坂さんを譲ってやってもいい、なんてあからさまな嘘の言葉を否定したわけじゃない。
「35回は王馬くんに関係のないところで逢坂さんが殺されそうになった回数」だなんて、僕の推理が当たっているかのように錯覚させた彼の態度を、彼の言葉を、彼の肯定を否定した。
「……嘘だ」
<嘘じゃないよ>