第21章 生かせ生きるだけ恨まれる
<オレが統率する闇組織の一つが「絶望の残党」で、雪ちゃんを組織ぐるみで殺そうとしてるんだよ>
王馬が何を伝えようとしているのか、わからない。
「……嘘だ、だってキミは…逢坂さんが飲まされそうになってた毒を自分で…」
<だから?>
「…………だから…?」
<最原ちゃん、小説の読みすぎじゃない?殺すつもりで盛られた劇薬をひと舐めしたら、誰だって死ぬに決まってるよね?毒に耐性のある身体を持つ人間なんて、フィクションじゃないんだし。30分で元どおりなんて、解毒薬持ってたに決まってるじゃーん!>
「そ、そんな都合よく解毒薬を持ってるなんて、それこそフィクションじゃないか!」
あぁ、いつもなら心地よく感じるはずのピアノの演奏が、ノイズに聞こえる。
不協和音が頭に響いて気持ちが悪い。
<都合よくないよ。オレは裏社会の総統だよ?どこかの誰かさんのナントカって組織が管理してるどんな毒が行方知れずだとか、そんな情報はいくらだって手に入るんだよね>
「キミが逢坂さんを殺す理由がないし、その毒の入ったスポドリだってキミは逢坂さんから取り上げてた、そ、それにキミは、毒を盛ろうとした犯人に憤ってた!!あれは嘘なんかじゃないだろ!!」
<わぁ、最原ちゃんエキサイトしてるね!ネタバラシしたかいがあったよ!でもね、雪ちゃんを殺す理由ならあるし、スポドリを取り上げたのは別の理由。まぁでも、毒を盛ったバカに怒ってたのは本当かな>
<オレやっぱり、雪ちゃんが大好きなんだよね。だから他人に殺されるくらいならオレが殺したいっていうか…部下にも隙あらば雪ちゃんを殺すように指示してたんだけどね?あ、でもスポドリ取り上げたのは、入ってる毒物に予想がついて、もしそんな毒を雪ちゃんが飲んだら、すごく苦しい思いをして死んじゃうだろうなーって思ったから。オレサディストじゃないから、彼女が苦しむ姿なんて見たくないし>
スポドリの犯人に憤ったのも同じ理由ね!と王馬がつらつらと言葉を並べ立てる。
最原は真っ青な顔をして、記憶している限りの、王馬が話した言葉の全てを思い起こし続ける。
ーーー35回