第21章 生かせ生きるだけ恨まれる
「あ。ようやく見てくれたね。嬉しいよ!ボクみたいな俗物と逢坂さんの視線が絡み合うなんて」
『絡み合う』
ほんとにツイてるよ、と、粘着質な執着心を余すところなくぶつけてくる狛枝の気遣いが、逢坂にしっかりと伝わった。
『…楽しみます』
「うん、それがいいね。あーもー…キミが楽しそうにしている姿を間近で見られて、今日のボクはホントに幸運だなぁ。今ならどんな不運に見舞われて死んだって、文句は言えないよね」
『そんな、大げさですよ』
高揚して話し続ける狛枝の隣で、逢坂は視線を彼から外し、会場内にいる友人たちの姿をぼんやりと眺めた。
「それに真宮寺クンの言ってたことは気にしなくていいんじゃないかな」
狛枝の言葉を聞き流しながら、逢坂は出入り口を見つめ続け、やはり。
彼の姿を探してしまう。
「キミの発明はさ、人類史上最高最善の発明であると同時に、この人類の終わりを体現しているって話でしょ?」
長い長い狛枝の話。
「人間より高性能なロボットが市場に出回るようになれば、才能もない取り柄もないゴミで地味でダメな人間は用無しになる。ハハ、そんなの、わかりきってることなんだから!真宮寺クンも、話すタイミングを選んで欲しいよね」
聞き流すべきじゃなかった。
「でも、人類の歴史の終わりともなると、民俗学者として黙ってはいられないんだろうね。まぁ言い換えることもできるし、当然かな」
(……来ないのかな、王馬)
「人類史上最高最善の発明。言い換えればさ」
「「「「人類史上最低最悪の発明」」」」
ガヤついた会場の中。
狛枝の声と被って何人かの生徒の声が聞こえた。
ハッとして狛枝を見ると、彼はとても。
とても幸福そうに笑っていた。
けれど彼の微笑みは、ピアノの鍵盤を奏でて、幸せそうに頬を緩めている赤松のそれと、全く違う。
純粋な悪意が滲むその笑みに、逢坂が身じろいだ瞬間。
ドッ、という地響きと同時
分厚い分厚い天井が爆ぜて
おびただしい数のガレキが降ってきた