第20章 あやまった探偵
中学時代と負けず劣らず。
一向に僕にたくさんの友達はできなかったけど。
「あれ?最原ちゃん今日帽子忘れたの?」
「…忘れたんじゃないよ。なんか最近邪魔だから、被ってない」
「へー?なんでかわからないけど、急に走り出したり上見なきゃいけなかったり、最原ちゃん大変そーだもんね!」
「…嘘だ。なんでかわかってるよね」
「もちろん!好きな女子を見かけたら追っかけるし、階段上を歩く女子のスカートの中を覗くには、帽子なんて邪魔だもんねー」
「そんなことしてない!」
「へ?別にいいのにーそんなところで嘘つかなくても。最原ちゃん嘘下手なんだから」
「ちょっと、信憑性が増すから!そんなことしてないってば!」
「はいはい、嘘ね。わかったわかった」
「王馬くん!!」
逢坂さんと出会った時みたいに。
カチッと噛み合うような気がしてた。
友達と呼べるほど仲が良かったわけでもないし、ただからかわれているだけのような気もしていたけど。
嫌いじゃなかった。
好きじゃない、と言い切ってしまうには、あまりにも言葉が強すぎる。
「…今回のことは僕が悪い。ごめんなさい。でもキミへの態度は変えない。変えていきたい部分もあるけど……つまり、キミと…その……」
「………オレと、何」
友達に、なりたい。
あまりにも今更すぎる最原の言葉に、王馬は目を丸くして、キョトンとした顔をした。
「オレに嫌がらせするほど嫌いなんじゃないの?」
「へ?」
「雪ちゃんにキスしたの、オレへの嫌がらせでしょ?最原ちゃんがオレが一番嫌がることわからないわけないもんね」
「…えっ、嫌がらせであんなことしない」
「じゃあなんで?」
「し…したかったから」
「オイそれはそれで腹立つなぁ、やっぱ土下座しろよ」
「ごめん……してもいいけど公衆の面前はやめてほしい」
「じゃあとりあえずこのパン食べてよ」
王馬は立ち止まっている自身の上にぶら下がっている、パン食いゾーンのパンを指差した。
「…あ、背が届かないから立ち止まってくれたのか」
「くだらないこと言ってないでさっさと食べてくれる?」
「う、うん」