第20章 あやまった探偵
まだ逢坂さんとキミが友達ですらなかった頃。
廊下で逢坂さんを見かける度。
授業中ずっとつまらなさそうにしていたキミは、本当に楽しそうに目を輝かせた。
「話しかけてみたら?」
僕がそう言っても、キミは首を横に振った。
「別に興味ないよ!それより最原ちゃん、オレとゲームして遊ぼうよ!」
それでも、彼女とすれ違う時。
キミが顔を硬直させて、少しうつむくのを知っていた。
なんでだろうって思ってた。
理由がわかった朝は、最悪な気分だった。
彼氏になった今でも。
逢坂さんが誰かと二人でいるのを見かけると、一瞬。
キミは迷子の子どものように不安そうな顔をする。
本当はきっと、すぐに声をかけたくて、触れたくてたまらないんだろう。
でも逢坂さんは、友達と穏やかに話をする時間も好きだから。
キミは大きく深呼吸をして、邪魔をしないでいようって決意するんだ。
数秒の間だけ。
でもやっぱり我慢できなくて、会話に混ざったり、ぶち壊したり、逢坂さんを独り占めしたりする。
多分、みんなは王馬くんが「一応」我慢しようとしてるってことを知らない。
ーーーオレに代わって、最原ちゃんが雪ちゃんを守れるって言うなら譲ってやってもいいよ
計53回。
真実か、嘘かなんて。
もうわかってしまったけど。
どうでもいいと思ってしまいたくなる。
そんなの嘘だと決めつけてしまいたい。
だって、ダサすぎる。
ーーーいつも自分本位だし、好きだっていうくせに何にも彼女のこと考えてない
それが真実だとしたら。
僕は、王馬くんになんて言った?
彼女に何をしてあげた?
ーーーじゃあ最原ちゃんは雪ちゃんのこと何考えてやったっていうのさ!振り回してんのはそっちじゃん!
(…あぁ、王馬くんの言う通りだ)
ーーーキミが逢坂さんのこときちんと大切にしてたら、僕だってこんなことしないよ!!
大切にしようって頑張ってるの、知ってたのに
どうしてあんなこと言っちゃったのかな
僕にとっては、王馬くんも
王馬くんも大切な