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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第20章 あやまった探偵




男子の待機集団の中から、王馬は遠目に待機している女子の先頭集団を確認していた。


「ねぇ、王馬くん。やっぱり休んでたほうがいいよ。どうしていつもはサボりたがるのに、この競技に限って出たがるの?」
「最原ちゃんは大げさだなぁー。ほっといてよ、もう大丈夫だって!」


王馬の右隣の待機列に座り、ストップをかけてくるのは、つい先ほどまで王馬を保健室に監禁していた最原だ。


(あんな毒、オレにとっては大したことないもんね)


いつもと違い俄然やる気なのは、この競技が王馬にとっては「つまらない」せいだった。
自分が参加しないことには、彼女のペアとなる相手が必然的に一人現れてしまう。
気にくわない。
だから出る。
それだけのことだが、最原にその理由を言ってやる気は毛頭なかった。


「仲直りしたんすね」
「…ん?」


前方の組が走り出したのを眺めて、王馬は大して準備をすることもなくスタートラインに並んだ。
左隣のレーンに立ち、二人に声をかけてきたのは、柔らかく笑ったまま足の体操をしている天海だ。


「こうして見ると、キミも普通の一般生徒と変わらないっすよね。…フツーにしてたら、何にも変わんないのに」


そう言葉を切って、彼は王馬の頭上に視線を移し、王馬がそうしていたように、目を細めて女子の先頭集団をしっかりと確認した。


「…変わんないのに、何?なんか含みがある言い方だよね?あっ、なんて言おうとしたか当ててあげよっか!」
「わかるんすか?」
「だってなんて言おうとしたか、わからせようとしたよね?「フツーにしてたら、何にも変わんないのに、残念」とでも思ったんでしょ。んもー気を使わないで言いたいことがあるなら言ってよー、オレと天海ちゃんの仲じゃん」
「ハハッ、そうっすね。俺と王馬君の犬猿の仲ですもんね」
「ちょ、ちょっと二人とも急にどうしたの?」
「そうそう犬猿の仲!…で?何?」


どこか、ピリついているように見える天海は大きく空を見上げて、仰け反った。


「…逢坂さんは「位置についてー」


そして深く深く身体を落とし、スタートライン手前で身構えたあと、にこやかに笑った。


「俺とペアに「よーい」んで」
「……は?」
「「え?」」


素っ頓狂な声をあげたのは、王馬と最原ともう一人。
天海の左隣に立って、自身の長髪を縛り直していた、狛枝だ。

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