第20章 あやまった探偵
午後一番で始まった、紅白対抗障害物競走。
他学年も紅白も男女も入り混じり、1位・2位ゴールを決めた生徒のみ各紅白組へと個人点が加算され、チームに貢献できることとなっている。
一周400Mレーンの手前と奥のスタートラインに生徒が男女別に分かれ、自分の順番が来るまで待機。
スタートの合図で、もう一方の集団に向かってレーンに沿って激走し、ちょうど互いの真ん中付近に置いてある番号カードを拾う。
向かいから走ってきた人の中から自分と同じ番号を引いたペアを探し出し、ゴールをようやく目指すことができる。
(…私とペアになった人は可哀想でならないな…)
まだ見ぬ自身の鈍足の犠牲者を憐れみながら、逢坂は遠い目をして、走行順を待つ生徒の集団の中に紛れていた。
「逢坂さん!死んだ魚の目のモノマネがお上手ですね!転子と一緒に目指せワンツーフィニッシュ!」
『…ワンツーフィッシュ?美味しそうだねその魚』
さては人の話聞いていませんね?と至近距離で鋭い指摘をしてくる茶柱は、早く走りたくてたまらない、と言わんばかりに体育座りをしながらも、そわそわと落ち着かない。
白組のメンツはキーボ、獄原、最原、白銀、春川、百田、茶柱、夜長、逢坂となっており、女子に関しては茶柱を除いた全員が戦力外文化系女子ばかりだ。
『まぁ…赤組も文化系女子ばかりか』
「赤組ですか?赤松さん、入間さんは確かに運動が苦手そうでしたが…東条さんは侮れませんよ」
『…確かに。速く走ってって依頼されれば、「うわぁあああああ!!!!」って叫びながらでも走ってくれそうだよね』
「えぇ、ギャップ効果です。堪りませんな」
『堪りませんね』
「でも私はミニマムなのにプリティな夢野さん一筋」、と聞いてもいない好みを語りだす茶柱から視線を外し、逢坂は一足先に障害物競走へと興じている前方の生徒たちを眺めて、気づいた。
『…あぁ、案外ペア決めまではみんなテキトーに走ってるな』
「男死のくせに情けないですね」
『いや、女子もだから。偏見がすごい』
「あ、次の次ですね!ワクワク!」
逢坂と茶柱の前で体育座りしていた一列が立ち、スタート位置についた。
逢坂はその彼女達が立つスタートラインのだいぶ先、ペア決め地点を眺めて、思った。
(…大丈夫なの?)