第20章 あやまった探偵
指先を少し舐めてみると。
思った通り舌先が痺れた。
(…即効性有り、けどこの分なら即死ってわけじゃなさそうだ)
思い当たる劇物を一通り頭の中に思い浮かべた。
だからこそ舐めてはみたものの、正直怖いもの見たさの部分が強い。
舐めなくてもこの程度の毒には当たりがついた。
危ない橋を渡ってみたくなるのは、大切な存在が身近に出来ても変わらない性分。
本当にどうしようもない。
(…あ、やば)
ほら、言わんこっちゃない。
指先が痺れてきた。
まぁでも死にはしないはず。
「…っ」
思ったより目眩がしてきた。
まるで頭を鉄球でぶん殴られたみたいだ。
人気のない校舎の壁にもたれかかって、荒く息を吐いた。
麻痺してきた指先から毒の入ったスポドリが滑り落ちそうになった時、誰かがそのペットボトルを掴み、倒れ込んだオレの身体を支えた。
「王馬くん、どうしたの?大丈夫…!?」
「……最原ちゃん」
サイアク。
なんでよりによって最原ちゃんになんか見つかっちゃうのかな。
もっと誰にも見つからない場所で毒見すればよかった。
「…大丈夫だよ、ちょっとした食あたり」
「えっ。…で、でもそれに口をつけてからふらついてたよね」
「………見てたんじゃん。趣味悪、触んないでよ。オレはピンピンしてるからさ」
「ご、ごめん。…元気そうには見えないよ、どこか座れるところにーーー」
最原ちゃんが何か話してる。
けど何にも頭に入ってこない。
自業自得、こんなのどうだっていい。
問題は、こんな劇物を彼女に渡した人間がまだこの校舎内にいるかもしれないってことだ。
(ーーーーぶちのめしてやる)
なんて、思ったのも束の間。
「えっ、王馬くん!?しっかり!!!」
「……………みず……毒舐めちゃった…」
「へっ!!?なんで!?水!?ちょ、王馬くん白目向かないで、しっかり!!王馬くん!!!」
身体の熱さと、痺れと、喉の異様な渇きに呻きつつ、オレは身体に力を入れることができなくなり、次第に脱力していった。
(………あぁ、サイアクだ)
「王馬くん、しっかりして!今助けるから!」
ホント、最悪