第20章 あやまった探偵
「逢坂ー!トス上げすぎなんだテメーは、身の丈に合った高さに上げろ!!!」
『ミ…ミノタケ…?』
「なぁにカタコトになってんだ、頭使え頭ー!!」
天海が「この二人」と指示した一人。
最原の隣に座っていた百田は、今や体育座りなど忘れて立ち上がり、赤松に負けず劣らずの声援を送り続けている。
「…はぁ…っ泣きそうになってる逢坂さんが見られるなんて………あのジャージ何サイズかな…S…M…?女子と男子のジャージって作り違うんだっけ、てことは女子ジャージのSかMを来春買っておけばつまり家に逢坂さんと同じジャ「狛枝さん」ははっ、冗談だよ最原クンやだなぁそんな不審者を見るような目で見ないでよ、大丈夫!大丈夫だよ、ちゃんとジャージは本物じゃなくて代替品で我慢す「狛枝さん?」ごめんね、やっだな嘘嘘!ぜーんぶ嘘だよーってね。ははっ」
そして、もう一人。
天海の隣に膝立ちしてカメラを構えている狛枝は、怪しくハァハァと息を荒くさせながら、ついに鼻をすすり始めてしまった逢坂にカメラの焦点を合わせ続けていた。
至近距離から冷めた目で見つめてくる天海には一切の視線を向けることなく、狛枝は「あぁっ…泣き顔すら可愛いよ…!」と犯罪スレスレの言葉をぼやき続ける。
「…まぁ…二人とも良くも悪くも逢坂さんに夢中みたいなんで。俺らの話は聞こえてないっすよ」
「……天海くん、その……」
「あぁ、別に謝らなくて大丈夫なんで。俺は逢坂さんの友達でしかないわけだし」
怒ってもいないんで、と軽く愛想笑いを浮かべて念を押してくる天海の威圧感に、最原はまた深くため息を吐いた。
「…ごめん」
「…俺に謝られても。なんつーか、見かけによらないっすね、最原君。俺もデートの別れ際、逢坂さんにキスしとけばよかったなぁ」
「えっ」
「ははっ、冗談っす」
「ま、まって。デート…したことあるの?」
「まぁ一応は。逢坂さんはデートっていうより、ただ俺と二人で遊んだってだけでしょうけど」
「……それは…デートじゃないの?」
「じゃあ最原君が中学まで逢坂さんと二人で遊んだりしてたのはデートっすか?」
「…あ…あれは…デートじゃないかも。お互い友達がいなくて、必然と二人きりだったっていうか…」
「そんなもんっすよね」