第20章 あやまった探偵
自陣の体たらくに打ち震えていた弐大が「気合じゃぁああ」と大声を発して、ボールの直径より太い腕を使ってアンダートスをあげる。
「なんで田中のやつソニアさんに預けに行ったんだ…?クソ、やったれ九頭龍!極道の魔弾を見せてやれ!」
セッター位置に立っていた左右田が不満げな声を漏らした後、レフトに立っている九頭龍の方へと身体を向け、トスを上げた。
「チッ…しゃーねーなっ……てオイ、全然ボール狛枝の方に行ってんじゃねえか!!」
連写している小泉の隣で、どうやら隠れてホームビデオを取っているらしい3年辺古山が「左右田、後で落とし前をつけさせてもらおう…」と低い声色で呟いた。
「あれっ!いいや狛枝打ったれ!!」
「ちょ、ちょっと待ってよ、そんな急に」
棒立ち状態から、幸運にもボールを叩けるタイミングで跳び上がった狛枝を見て、センターに立っていた百田が声を張った。
「あっ、逢坂だ!!」
「えっ!?どこ!?」
仕返しをされた狛枝はボールから視線を外し、百田の指差した方向に座っている逢坂に焦点を当てた。
ボールと一緒に真顔で落下しながら、「体育座りしてるなんてレアすぎるよ!!!」と歓喜の叫びをあげた狛枝に左右田のドロップキックが命中し、桑田が完全にやる気をなくして「…ピュー」という気の抜けるような笛の吹き方をした。
「くぴー!ちょっとちょっと皆、どうすんの!?負けてるよぼくたち!?」
「もっと気合じゃああ!!!超高校級のマネージャーであるワシがおるというのに、まさか大敗して終わる気か!?」
「おっさーん!仇はオレ達が取ってやるぜ!!」
「フラグを立てるな、なんちゅー酷い声援じゃ!!!」
声援送れるようなシーンあったっけ、と呟く七海の隣。
皆だっさーい死んでよー、と笑ったまま西園寺が吐き捨てたのを聞いて、花村がてるてるてるてると震え始めた。
「ぐぬぬ、絶望的っすね…!でもまあそんな日もあるってことで!ナイスファイ☆」
「うゆぅ…が、頑張りましたよね…あぁっごめんなさぁい、運動なんてできた試しないのに偉そうなこと言ってごめんなさぁい!!!」
それぞれ好き勝手に発言している先輩方と、まだ真面目に声援を送っているうちのクラスを交互に見やり、逢坂は思った。
(先輩達、フィクションみたいにキャラ濃いな…)