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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第19章 ここだけの話




「あぁ、これはね。逢坂さんを撮ろうと思って」
「……えっ、そんな何台ものカメラを設置して?」
「うん、3カメだね。違う角度から撮らないと」


確実に、ドン引きされると思います。
そう言ってあげたいが、自分もドン引きされるようなことをしでかしてしまった身だ。
純粋に(狂気的に)彼女を好いているだけの先輩に対して、水を差すようなことを言う度胸はない。


「おい狛枝、花村がなんかマジでハァハァし始めたから早く出るぞ」
「えっ、それはマズイね。えーっと……ねぇ百田クン、最原クン。ヘアゴム持ってそうな髪の長い子、同じクラスに居たりする?」
「あぁ、真宮寺なら確実に持ってるよな。もうちょっとしたら多分来るんで!」
「そっか、じゃあちょっとボクはここで待とうかな」


そう言った矢先、更衣室へまた数人の生徒が入ってきた。
大所帯な学校故、更衣室を使う時間は細かいタイムスケジュールで分かれている。
3年A組の使用時間が終わり、2年A組の使用時間が始まってから5分ほど遅れて、マイペースな生徒たちが更衣室へと入ってきた。


「ねぇ、キー坊別に着替えないんだからついてくる意味なくない?」
「いえ、まだグラウンドへの道を覚えていないので」
「絶対嘘じゃん!下手くそかよ!」
「い、いいじゃないですか。集団行動は人間的安心欲求を満たすに必要な行為です」
「ロボットに人間的欲求なんてないじゃん」
「ありますよ!ボクだって一人にされたら寂しくて意味もなく再起動を繰り返したりします!」
「寂しくて再起動って、人間でいうところのどれにハマるんすかね…?まさか人生リセットと同義とか?ははっ」
「ククク…天海君、結構笑えない冗談平気で笑うよねぇ…案外、クラスの子たちの中で一番肝が座ってたりしてね」
「おぉ真宮寺!おまえヘアゴム持ってたら先輩に一つやってくれ!」
「ヘアゴム…?いいヨ」


真宮寺がガサガサと体操着の入ったナップザックから、小さなポーチを取り出した。
そのポーチの中身を出して一つ一つ自分のロッカーに並べていく真宮寺の所作は、とても「おしとやか」という一言に尽きる。
リップクリーム。
ハンドクリーム。
ソーイングセット。
中々お目当てのものが出てこない。


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