第18章 得意不得意
うん、スパイ!
とにこやかに提案してくる王馬に、再び三人の視線が集まる。
「要はさぁ、オレは最原ちゃんが雪ちゃんに対して口説こうなんて身の程知らずな気が起こらないくらい、この体育祭ではっずかしい目に遭って貰えばいいと思うんだよ。どうやら最原ちゃんの考えとしては、オレが闇社会に身を置いてるってだけでオレが雪ちゃんと付き合うのは反対って感じらしいから、オレのポジティブキャンペーンをした所で無意味なんだよ。なら単純に、対抗馬の最原ちゃんのネガティブキャンペーンをして、プライドも自信も何もなくなったところで何も望まなくなった最原ちゃんを赤松ちゃんが慰める…ほら、完璧なストーリーだよ!」
「タチの悪さに関しては最原君と王馬君は比べものにならないっすね」
「わかってないなー天海ちゃんは。オレなんかより最原ちゃんの方がタチ悪いって」
「キミと最原君を比べたら、雲泥の差っすよ?ね、赤松さん」
「えっ?う、うーん……でもよくよく考えてみれば、最初に王馬君と付き合うのはどうなの?って最原君がネガティブキャンペーンをし始めたってことだよね」
「さっすが赤松ちゃん!!みんなの為なら、人1人率先して殺しそうな狂気を秘めてるだけはあるよね!!」
「秘めてないよ!私のネガティブキャンペーンはやめて!!」
「いいじゃん、どうせオレらみんな公式に第6章でネガティブキャンペーンされた仲間同士なんだし」
「大抵人を信じてない赤松さんの話は今はいいんすよ。そんな性格の悪いやり方しなくても、王馬君が最原君の信頼を得られるように努めればいいだけじゃないっすか」
そもそも、俺も最原君の意見に賛成っす。とわざわざ挙手してにこやかに裏切りの意志を公表した天海に、キーボが「赤松さん人間不信なんですか?ボクも最近、その症状に陥りそうです」とコメントした。
「ちょ、ちょっと二人とも…第6章とか、なんの話?それに、私はみんなのこと、信じてるから!!」
「はいはい、フィクションフィクション」
「やめて王馬くん!そんな軽いノリでこれ以上公式を責めないで!!」
「公式…?」
首を傾げたキーボに、天海が「こっちの話っすよ」と笑って声をかけた。