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【王馬小吉】出演者達に休息を(ダンロンV3)

第18章 得意不得意




「おい逢坂、大丈夫か?」
『…………』
「おまえインテリだとは思ってたけどよ、まさかグラウンド少し走っただけでそうなるとは…体育祭マジで大丈夫か?」


逢坂は首を盛大に横に振った。
百田は駆け寄ってくる前に、グラウンド端に置いてあった自分の鞄から持ってきていた水のペットボトルを、逢坂に渡した。


「あんま無理すんなよ」
『………誰が無理させているとお思いですか?』
「あんなのは本当は無理には入らねえんだよ。まさかあの程度でゲロっちまいそうになるやつがいるとはなー」
『……白組から左遷してくれ』
「左遷先は保健室か?んなの、せっかくの行事なのにつまんねーじゃねぇか。マジでヤバそうだったら、無理しないで休み休み走れよ」


おまえも、楽しめるようにしたいしな!
と百田は親指を立てて、ウインクをしてきた後、ぐしゃぐしゃと逢坂の頭を撫でて集団に戻っていった。


(……今の)


王馬に見られてたら完全におしおきタイムだったな、と考えながら、逢坂は百田からもらったペットボトルを開封し、その手応えのなさに、違和感を感じた。
ペットボトルを見ると、半分ほど水かさが減っている。
しばしの長考の後。
ゴクリとペットボトルに口をつけた時、グラウンドに背を向けていた逢坂の肩を、誰かが叩いた。


『ゲホッ!ごほっげほ』
「うわぁっ、ごめん逢坂さん!」
『……あぁなんだ最原か』


ここ数日。
げっ、最原か。
という非難めいた視線を逢坂から浴びせ続けられていた最原は、その興味なさげな彼女の反応にホッとするという切ない体験をした。


「大丈夫?」
『リバースは回避できてる』
「そっか、あのさ。百田くんに言われたんだけど、僕とゆっくり走らない?」
『……なんで最原?』
「僕が、一番逢坂さんと仲良いからだって」


断りづらくて、ごめん。
と、自分が名乗りを上げたわけではないことを最原は補足して、逢坂の顔から、緊張した面持ちで視線を逸らした。

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