第17章 押しつけられた隠し事
「王馬君、オレの癒着に回されるはずだった品にまで手を出さないでほしいっす」
「ポッキーぐらいで我慢できるくらいの嫉妬心なら捨てちゃえば?」
「…………………は?」
『やめて、もうサバンナ地帯を発生させないで』
「これ以上被害を甚大にしたくないなら、雪ちゃんはオレに言わなきゃいけないことがあるんじゃない?」
『………』
ね、雪ちゃん?
語尾を、低いトーンで締めくくった王馬は目を細めて逢坂を観察し始める。
その探るような視線を、退院してから昼夜問わず受け続けている逢坂は、げんなりとした顔をしながら視線を逸らした。
「みなさーーん!この茶柱にご注目くださーい!!」
それは、逢坂にとってはベストタイミングと言っても過言ではない助け舟。
昼休みがもう終わろうという時間帯に、クラス全体へと声をかけたのは、教卓の上に仁王立ちした茶柱だ。
文字通り教壇ではなく、教卓に立つ茶柱のスカートの中はもれなくクラス全員に覗くことが可能であり、その事実に気づいていないらしい茶柱は、自らに視線を集中させるような発言をした。
「おい格闘ブス!!てめぇのお粗末な柄パンが丸見えだぞ!!」
デリカシーがあるのかないのかわからない発言を入間がした直後、サッと自席に座っていた東条が進み出て、自身のハンカチで茶柱の股間を品のある所作で隠した。
(色々と残念だ)
と逢坂が思った直後、「男死はこの話が終わり次第殺します」と宣言した茶柱は、教卓から飛び降り、黒板にチョークで字を書いた。
「次の授業はLHR、つまり学級の議題に時間を使う授業となっているので、6月に開催される体育祭の選手決めを行いたいと思います!」
そういえば、彼女は体育委員だったっけ。
なんて新学期早々病院送りになった逢坂が茶柱に興味を持っていると、椅子に横座りしていた彼女の膝の上に、王馬が躊躇いなく腰を下ろした。
『重い』
「えー?もしかしてまた身長伸びたからかな」
『そういうことじゃない』
最後列で「綺麗なのにかわいい」逢坂にちょっかいを出している王馬に、茶柱が目ざとくチョークを投げナイフのように投げつけた。